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新興国の多様なニーズに応えるトラックの開発リードタイムを短縮
「商用車とディーゼルエンジンにおけるグローバルリーディングカンパニーを目指す」というビジョンを掲げるいすゞ自動車に今、世界の自動車市場から注目が集まっている。
温室効果につながるCO2 の排出量削減に代表される環境問題への対応が迫られる中で、ディーゼルエンジンがあらためて評価されているのだ。一方では、ディーゼルエンジン開発の高度化、高コスト化といった負担の軽減を求め、自動車メーカー間のグローバルな技術提携や新しい協力関係構築の機運が高まっている。こうした状況下で、日本・米国・欧州それぞれの厳しい環境基準に適合するディーゼルエンジンをフルラインナップで有する同社への期待が、ますます高まっているわけである。
とはいえ、いわゆるリーマンショックが引き金となって世界が同時不況に陥って以降、同社の主力商品であるトラックの需要も低迷が続いている。いち早く黒字回復を遂げた同社といえども、かつてのような需要の回復は期待できそうにない状況に立たされているのだ。先進国を中心に、これまでドア・ツー・ドアで物を運んできたトラックによる物流体制が、エネルギー効率の観点から見直される傾向にもある。
そこで新たなターゲットとなるのが、アジア、アフリカ、中南米といった地域における新興国の市場である。ただ、一口に新興国と言っても、経済の発展レベルや道路事情、法規制はまちまちであり、自ずとトラックに対するニーズも国ごとに大きく異なってくる。
そんな現状を見据えつつ、「さまざまな国のニーズや事情に合ったトラックを、いかに短期間で開発し、なおかつ低コストで提供できるかが、ますます重要となっています」と語るのが、同社CAE・システム推進部IDEPグループのグループリーダーを務める種川義則氏である。
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CAE・システム推進部
IDEPグループ
グループリーダー
種川 義則 氏
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「海外向けの製品では、お客様の使い方も使用される環境も異なりますし、各国により異なる排ガス規制や安全基準等に対応する必要もありますので、国ごとに異なる仕様の製品開発が求められます。弊社の売り上げの6割以上は海外向けですが、海外売り上げ比率は今後もさらに高くなると考えられますので、今後も海外向け製品の仕様は増えるでしょう。
製品を効率的に開発するために、当社ではデジタル開発と呼ぶコンピュータシミュレーションを活用したフロントローディングプロセスを取り入れています。デジタル開発では、実機を製作する前の段階でコンピュータシミュレーションを活用することにより、改良点の早期発見と早期改良を進めることができるようになります。このため、実機評価の段階で改良点が発見されることによる手戻り作業の発生を大幅に減らすことが可能となり、開発に要する時間と費用を削減することができるようになりました。
このようなプロセスの切り替えにより、多くの国々で要求される仕様を反映した製品開発を、プラットフォームの企画検討段階から進めることが可能となっています」
GMとの共同開発に重点を置いたPDMシステムを導入
もっとも、プラットフォームの設計段階から、国ごとに異なる多様な仕様を織り込んでいくとなると、そのバリエーションは数百種類にも及ぶ。また、CADによる3次元モデルや設計図面のほか、多数の構成部品を管理するBOM(Bill of Materials:部品表)、設計プロセスや生産プロセスに関する指示書や手順書、規定など、そこで管理しなければならない情報も膨大になってくる。
そうした中で同社が注力しているのが、PDM(Product Data Management:製品情報管理)への取り組みである。PDMは、その企業におけるモノづくりの思想や体制、プロセス、ルール、ノウハウなどをそっくり反映させたシステムといっても過言ではない。
裏を返せば、PDMシステムを本当に実のあるものとして開発業務に定着させるまでには、非常に大きな困難がともなう。一般的なパッケージ・ソフトウェアのように、単に導入しただけで問題を解決することはできない。ベンダーから提供されたテンプレートを多大な労力と時間をかけてブラッシュアップし、自社に適合させていく必要がある。
同社にとっても、そうした作業にゼロベースで取り組むのは重荷であった。そこで採用したのが、当時資本提携を結んでいた米ゼネラルモーターズ社(以下、GM)が作成したPDMシステム構築時の標準設定集(以下、GMテンプレート)である。
そこに記された“ルール”に従って、PDMシステムを構成するさまざまなハードウェアやソフトウェアの導入や運用、バージョンアップを行うのである。これにより、いすゞ自動車は短期間のうちにGMのノウハウを利用することが可能となるわけだ。また、いすゞ自動車とGMの両社は同じPDMのコンセプトに基づいて、CADデータをはじめ、スムーズな設計・開発情報のやりとりを実現することができる。
「もともとGMテンプレートはGMとの共同開発の必要性から導入したのですが、さすがに何千人ものエンジニアの手によって熟成されてきたものだけあって、非常に優れた仕組みでした。そこで、GMとの共同開発以外のプロジェクトでもこのテンプレートをベースに採用し、いすゞ自動車独自のBOMとの連携や設定を施したカスタマイズを行いながら、利用を続けてきました」と種川氏は語る。
GMテンプレート絶対主義から脱却しいすゞ流のPDMシステムを模索
実際、いすゞ自動車はGMテンプレートに定義されたITインフラを導入するとともに、PDMシステムの核となるTeamcenterやCAD/CAM/CAEソフトウェアのNXといったアプリケーションについても、GMと足並みを揃えて導入やバージョンアップを行ってきた。
ただ、GMとの共同開発の枠を越えたビジネスを他社との連携のもとで展開していく、あるいは新興国を中心としたグローバル市場により積極的に打って出るためには、やはりいすゞ自動車として独自の取り組みが欠かせない。
そうした中で大きな転機が訪れた。2006年4月におけるGMとの資本関係の解消、そして同年11月に実施されたトヨタ自動車との資本・業務提携の締結である。
「これまでは、GMテンプレートがすべての開発業務の前提に位置づけられていたため、いすゞ自動車にとって何が良い方法なのかを考える余地がありませんでした。資本提携が解消された今、それが可能となったのです。GMテンプレート絶対主義から脱却し、あらためて『いすゞ流』とはどうあるべきかと考え始めました。もちろん、GMテンプレートを捨て去るわけではありません。GMテンプレートをベースにしつつも、そこに我々なりの考え方を盛り込みながら自力で育てていく、すなわち『いすゞテンプレート』を模索していこうというチャレンジが始まりました」と種川氏は語るのである。
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