| 「人の介在=リスク」であることを認識
ヤンセンファーマ株式会社は、1978年にJ&Jと協和発酵との合弁による「ヤンセン協和株式会社」 として発足、2001年にJ&Jの全額出資会社へと移行、翌年には「ヤンセンファーマ株式会社」に社名変更。現在J&Jグループの日本における医療用医薬品事業を担う製薬企業として事業を展開している。
いま、情報の電子化やそれを基盤とした流通・共有体制の進行の中で、情報チャネルの多様化も加速している。それに伴って、コンプライアンスやセキュリティ確保に対するイニシアチブも一層複雑になった。周知のように、J&Jは全世界に広がる200以上の会社からなる企業の連合体だ。それだけに企業倫理や法令遵守に対する感受性が高く、厳しいコンプライアンス思想のもとに、早い時期からグループ一丸となってワールドワイドな取り組みを進めてきた。
「2002年7月に制定された米国のSOX法を契機として、米国・本社の主導で米基準に基づく標準化を進め、グループ全体を貫く対応を進めてきました」
そう語るのは、インフォメーションテクノロジー部 IT管理グループ 渡邊氏だ。
「基本的に『性悪説』に立った世界観に基づいて、『不適切な行動ができない統制環境を築くこと』が、SOX法に準拠する基本です」と、渡邊氏は指摘する。
「どちらかといえば、相互信頼の性善説に立脚した日本の商習慣の中で、SOX法の思想を貫徹させることは難しいことですが、部門横断的な業務遂行はできる限りシステムによる自動化を図り、社員一人ひとりに対しては過剰な権限を付与しない姿勢が必要です。ビジネスの全プロセスに対して、人的な介在がなければ理論的には不正は生じ得ないのです。また、不正は必ずしも悪意に基づいた故意的なものだけとは限りません。勘違いやケアレスミスなどを含め、人手の介在はそれ自体がリスク要因なのだということを、はっきりと意識しなければいけません」
新たな制度が求める発想の転換
渡邊氏の発言にあるように、不正を招く隙間のない企業体制を実現するためには、社員一人ひとりの役割と責任範囲を明確化する職務分掌の整備とそれに具現化した組織やシステムアクセス制御が不可欠だ。しかし、実際のビジネス現場では、各自の役割を細分化して制限することはそれほど容易ではない。
SOX法対応の基本は、財務報告に影響を及ぼす可能性があるリスクの芽を事前に摘み、万一問題が生じた場合には、その影響範囲を最小限に抑制すること。そのための統制を築き維持することがポイントだ。特にSOX
法に基づく監査では、リスクを未然に防ぐプロアクティブなスタンスが重視される。
これまで多くの企業では、オールマイティに部門横断的な采配をふるうことができる人材の育成を進めてきた、という経緯があります。事実、一人の人間が全プロセスを熟知・把握し、鳥瞰的な視点で迅速な判断を下し、一気通貫でアクションを進めた方が効率的・生産的であることも否めません。また、社員側の視点で見ると、経験を積みながら裁量権を拡大し、全体を見渡した動きができるようになることは、社員のキャリアディベロップメントそのものという側面もあります。社員の意識としては、それをいったん清算することへの軋轢もあるでしょう。
しかし、企業を取り巻く環境が大きく変化した今、良くも悪くも社員は、身の潔白を自らが証明しながら働くという難しい時代になりました」(渡邊氏)
そこで、今回ヤンセンファーマではSOX 法の思想を貫くために、企業組織や職務権限の再規定をした。企業の社会的責任(CSR)という言葉が当たり前に使われるようになった昨今、企業の構成員である従業員も自らの潔白である事の「説明責任」を持つ時代が来たといえるだろう。そうした中、「コンプライアンス強化」は、企業にとってはもちろんのこと、従業員にとっても重要な意味を持つようになった。
強力なトップダウンで改革への機運を醸成
米国本社が求める厳しいコンプライアンス体制の実現に向けて、CFO、CIOを始め社長の強いサポートを得て社内の体制を整えた。
職務分掌の基本は、取引の承認と記帳、資産保全管理などを、それぞれ別々の担当者が受け持つことが基本となる。そこで購買ー生産ー営業ー経理など財務報告に直結する業務として、統制の対象となるサプライチェーンに関わる各部門のキーパーソンを巻き込んでプロジェクトを推進した。その際に業務分析、職務分掌の分析は経営企画部が、システムにおけるソリューションはインフォメーションテクノロジー部が担った。そのようなプロジェクトの最前線に立った経営企画本部経営企画部
青木氏はこう語る。
「各職分の範囲やJ&Jグループとしての基本姿勢を示したガイドラインの分析を進めながら、同時に実際の職務現場とのギャップや『ほつれ』を摺り合わせていくことに努めました」
さらに、あるべき姿として築かれた基本姿勢と各現場の要件の乖離をシステムがどう埋めていけるか、を繰り返し検証する中で、精度の確かさを実証していったのである。
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