| 劇的な仮想化の効果
VMwareによるインフラ統合であれば使い勝手は変わらない、とはいっても新しい環境に移行するには努力が必要だったのも事実だ。ファイザーでは、仮想インフラへの移行進捗度を各部門責任者がマネージメントの前で発表するという形で進捗確認を行った。トップダウンでもボトムアップでもなく、ミドルアウトで調整を行ったことが迅速な移行を実現したポイントだったという。
「VMware P2V Assistant(既存の物理マシンのイメージをVMware仮想マシンに移行するための移行ツール)を活用してユーザの使用環境を簡単にコピーできるので、新しい環境にスムーズに移行できた。当初、サーバ環境を準備しましたが、移行が全く進まない状況でした。たとえて言うと、アパートを造ったが、誰も入居者がいない状況。そこで、ユーザの利用環境を実現し、すぐに生活できる環境を整えました。つまり、家具つき部屋のように生活をしていただいて、快適なら、本番移行してもらう、というものです」(福崎氏)
エンドユーザにとってVMware環境へ移行できない理由がなくなり、そこに部門責任者の移行促進が加われば移行は加速する。その移行促進の牽引役として、会議の場での進捗度点検が有効に機能し、Windows NT環境からWindows 2003のマルチランゲージ環境へ移行が成功した。こうした「NT ターミネーション作戦」は全世界で展開され、日本では使用頻度が減ったアプリケーションを50本同時に処分し、システム廃棄するなど大きな効果を得ることができたという。
「220台のサーバを12台のHP ProLiant DL580に集約していくことで不要なサーバ保守契約の解約が可能となり、また、データセンタースペースも40%まで削減することができ、コスト削減を実現できました。さらに、V-Motionにより、アプリケーションの停止時間がなくなり、サーバ提供時間が20日から1日に、OSのインスタレーションが1.5時間から10分になるなど、大きな効果を得ることができました。ユーザにとって、何より、トラブルが少なくなったことが大きなメリットだと思います」(福崎氏)
さらに仮想化によって、不要固定資産の除却・廃棄、アプリケーション停止時間の短縮(過去2回のメンテナンスの際アプリケーション停止なし)、ローカル作業であったオフラインバックアップのリモート化、雛型作成・メンテナンスの簡便化(VMwareのテンプレート機能)が実現するなど、仮想化のメリットは絶大だ。VMwareに移行した現在、220台中120台(論理OS)を、VMwareサーバ12台に移行し、残りのサーバは移行検証中だ(実際には廃棄するサーバもあるので、すべてがVMwareに移行するわけではない)。1台のサーバに12から15のOSを載せた12台のサーバを3グループに整理することで6000人のユーザが仮想インフラを利用している。
「ハードウェアとしてHP ProLiant DL580を採用した理由は、VMwareのグローバル標準サーバであった点にあります。仮想インフラのトラブルは少ないのですが、いったんトラブルが発生すると、修復に時間がかかったのも事実です。仮想化のためトラブルの切り分けが難しく、原因究明が困難だからです。ただ、現在までに発生したトラブルは2件ほどで、サーバ集約前に比べて格段に減っています。われわれIT部門の人間がトラブル対応などから解放され、ビジネスに役立つシステム開発という本来のコア業務に注力できる点も大きなメリットです」(福崎氏)
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インフラもオフショアを積極的に活用
構築された仮想インフラの日常的なメンテナンスは、ファイザーのシステム運用を一手に担っているHPが担当する。それだけにHPに対する期待は大きい。ファイザーでは、仮想化技術の実績をベースに適用範囲をグローバルに拡大することや、ITの柔軟なライフサイクル管理の運用において、結果として、ハードウェアとソフトウェアを分離できることも想定しており、仮想化技術に対する今後の期待は高い。HPも従来の運用面だけでなく、システム構築の面でも新たな取り組みが期待されている。
「ハードとソフトの分離は、いわば土地と建物を分離するようなものです。今までアプリケーションはハードと一体となっていたため変化に柔軟に対応できませんでしたが、ハードとソフトを容易に分離できれば、ビジネスニーズに対応したアプリケーションを迅速に用意できます。しかも、仮想化技術を使うことでサーバ台数を少なくできるのでコストメリットも大きくなります。また、オフショア化によってサーバを日本に集約する必要もなくなります。HPが運営している大連のサポートセンターのように、インフラの面でもオフショアを積極的に活用していきたいと考えています。今やファイザーのITは日本のビジネスに役立つというだけでは許されず、常にグローバルな視野で考えなければなりません。われわれITスタッフもグローバルプレイヤーにならなければならないのです。その面で、パートナーであるグローバル企業、HPの協力を期待したいところです」(福崎氏)
グローバルなIT標準として仮想化技術を活用
さらに、ファイザーではグローバルレベルでターゲットアーキテクチャを定義し、共通点が多い業務システムは統合する、いわばグローバルユーティリティを実践に移そうとしている。その手段としても仮想化技術が有効という認識だ。しかし、グローバルユーティリティを実現するには、統一した、AHS(Application Hosting Service)、ASD(Application Service Delivery)、BCP(Business Continuity Plan)やDRP(Disaster Recovery Plan)などが求められる。
「現在、グローバルユーティリティを実現するために、グローバルレベルのMSP(Managed Service Provider)構築に取り組んでおります。今後はMSPとともにインフラのオフショア化を進めていきたいと考えています。今回の経験でグローバル化はそんなに怖くないという実感をもちました。通常、ビジネス要件が決まらないとサーバのサイジングなどもできませんが、仮想化技術を使えば容易に対応できるからです。さらに、VMwareはBCPやDRPにも有効だと考えています。その意味でもファイザーのIT標準としてVMwareをもっと活用したい。また、インフラをオフショア化すると縛りがなくなり、運用も大変楽になります。HPには運用レベルで、仮想化技術を強力にサポートして欲しいと考えており、そのために、VMwareのスキルなど、エンジニアのレベルを上げていただきたいと思います」
仮想化技術による大規模インフラ統合の成功によって、今後は仮想化技術をグローバルなIT標準として活用することを促進し、HPとともにその適用範囲を拡大することが期待される。 |