| 次世代の微細化プロセスに対応するために求められる膨大なコンピューティングパワー
2000年以降の半導体市場は製品の相場を決めるメカニズムが大きく変化し、急激な価格変動の影響が顕著に現れている。さらには、顧客企業の開発・製造のサイクルが短期化し、消費者の購買スタイルが多様化する中で、半導体メーカーには今まで以上のスピード感を持った経営戦略の実行や事業展開が求められている。
まさに半導体メーカーの生き残りを賭けた競争が始まった2003年、日立製作所と三菱電機の共同出資によって設立されたのがルネサス テクノロジだ。同社は世界トップのシェアを誇るマイコン事業を核として、競争力のあるシステムLSI 製品群を提供。さらに、自動車、デジタル民生機器、モバイルの各市場にフォーカスしたシステムソリューション事業を展開し、ユビキタスネットワーク社会の実現を目指している。
また、業界をリードしてきた競争力をより確実なものとするべく、ルネサス テクノロジは事業リソースの選択と集中を加速。海外市場での販売拡大に向け、技術サポートを含めた製品力の強化、付加価値とコスト力のある製品の開発、半導体ユーザの開発期間の短縮に貢献する製品プラットフォームの整備を進めている。
現在、ルネサス テクノロジが推進しているのが、従来の90nmプロセスから65nmプロセスへの対応、すなわち半導体の製造プロセスのさらなる微細化の実現である。これにより、同じ面積のチップ上に今まで以上に大規模な回路を集積でき、より高機能なマイコンやシステムLSI を開発することが可能となる。もっとも、これを実現するのは容易なことではない。半導体の製造ラインを構成する各種設備のみならず、IT基盤の増強にも膨大な投資が必要となるのである。ルネサス テクノロジ 製品技術本部 設計技術統括部 DFM・ディジタルEDA技術開発部アドミニグループのグループマネージャを務める太田之裕氏は次のように語る。
「仮にチップ上に集積する回路の規模が2倍になったとして、その設計に必要となるサーバのパフォーマンスやストレージのキャパシティが2倍で足りるかというと、そうではありません。半導体プロセスを90nmから65nmに微細化すると、電子のレベルで物性が大きく変わってくるなど、設計は非常に複雑なものとなり、必要とされるコンピューティングパワーは4倍以上へと相乗的に高まっていくのです」
こうしたことからルネサス テクノロジは、ITインフラおよびデータセンタのあり方そのものを見直すべき状況を迎えたのである。
コンピューティングパワーを高密度に実装できるHP BladeSystem c-Classの導入を検討
65nmプロセスへ対応できるコンピューティングパワーを確保するため、ルネサス テクノロジが注目したのが、ブレード型サーバHP BladeSystem c-Classである。ルネサス小平セミコン 情報技術部 設計環境サポートグループ 技師の高橋尚之氏はその理由を次のように語る。
「データセンタの限られたスペースに、いかに高密度にサーバを設置することができるかと考えたとき、行き着いたのがブレード型サーバでした。1Uタイプのラックマウント型サーバと比べてもブレード型サーバのスペース効率は格段に優れています。同じパフォーマンスを確保する場合、設置面積は半分程度です。消費電力の観点からも、ブレード型サーバはラックマウント型サーバに比べて30%程度の削減効果が期待できると聞きました。また、サーバだけでなくネットワークスイッチやSANスイッチなども含め、すべてのコンポーネントを1筐体(エンクロージャ)内に集約できるので、ケーブル類の配線やブレーカの数も最小限に抑えることができます。後々の運用管理を容易にするという意味でもブレード型サーバは非常に魅力的でした」
しかし、いかに高密度かつワット比パフォーマンスに優れたブレード型サーバといえども、既存サーバの2倍以上のパフォーマンスを一気に増強すれば消費電力の増加はやむを得ない。ルネサス テクノロジは自前でデータセンタを有しているため必要な電力の確保はそれほど困難ではないが、問題は新たに発生する“熱”をどうするかだった。
「これまでも“熱”とその対策は、イタチゴッコのような状況を続けてきました。実は2007年5月に空調設備を増強し、ようやく安心してサーバを運用できる環境を手に入れたところでした。しかし、そこに新たにブレード型サーバを導入し、本格的な運用を開始したとき、発生する“熱”をどうやって逃がせばよいのか……。限られたスペースにどう配置すればよいのか、そもそも今ある空調設備の能力で冷却は可能なのかなど、見当もつかないというのが正直なところでした」と、太田氏は明かす。「さらに大きな問題は、ブレード型サーバの運用を開始すれば、設計業務はそれを前提として進められることになります。後から“熱”問題が表面化しても、安易に停止はできないのです」と、高橋氏が言葉を続ける。
HP BladeSystem c-Classを導入するにあたっては、その前に現状のデータセンタにおける冷却 (空調) の実態およびそのキャパシティを正確に把握することが不可欠だった。そこでルネサス テクノロジは、HPにサーマル・アセスメントおよびサーマル・プランニングを依頼したのである。 |