| 物質・材料の学術研究、応用研究の世界的中核拠点
東北大学金属材料研究所の起源は1916年に発足した臨時理化学研究所にある。当時研究主任だった本多光太郎博士が強力な保磁力を有するKS鋼を発明。日本の鉄鋼研究の先駆けとなった同研究所は、その領域を金属全般、そして広範な物質や材料へと拡大してきた。
さらに、材料科学の飛躍的な進歩と新素材産業の発展に対応するため、同研究所は1987年5月に東北大学附置全国共同利用型研究所として再スタートを切った。研究部門の大幅な転換と研究施設の充実を図るとともに、国内外の研究者や技術者との共同研究を積極的に推進。ナノ物質材料研究をはじめとする物質・材料の学術研究・応用研究の世界的中核拠点へと発展している。
スーパーコンピュータ同士のネットワーク結合を推進
同研究所教授 川添良幸理学博士が進める研究は、計算解析に基づいて金属材料を捉え、原子レベルで新材料を設計するというものだ。波動関数の時間的変化を示すシュレディンガー方程式を、モデルを使わずにダイレクトに解く第一原理計算や分子動力学計算、さらにモンテカルロ法など複雑な確率論的シミュレーションを基にマテリアルデザインを進める川添教授の研究にとって、大規模解析計算を行うスーパーコンピュータは不可欠の存在である。
このような大規模シミュレーション計算を行うスーパーコンピューティングシステムの運用、利用支援を担うのが金属材料研究所計算材料学センターである。川添教授の研究室は、以前から科学技術計算を駆使し、スーパーコンピュータの運用およびネットワークの高度化を行ってきた経緯から計算材料学センターの責任部門を担当している。
大規模な科学技術計算を必要とする同研究所では、これまでも5年ごとに約10倍の演算能力を持ったマシンを導入してきた。2007年に計算材料学センターに導入された新たなスーパーコンピュータは、16CPUを1ユニットとして全体で51ノードを有する大規模なもの。これはそれまで活用してきたシステムの約8〜10 倍の演算性能を発揮する。
同研究所は、東京大学物性研究所、自然科学研究機構分子科学研究所、九州大学情報基盤センターなど複数の材料設計研究機関とVPN(Virtual Private Network)で接続。相互協調的な仮想研究コミュニティ形成を目指す超大規模ナノテクノロジー用シミュレーション計算環境(ナノテクVPN)をスーパーSINET上に形成した。これは世界的にもほとんど例のないスーパーコンピュータのネットワーク結合である。北陸先端技術大学院大学、広島大学などとも1ギガビットで接続され、さらに韓国やシンガポールなど、海外の大学や研究機関との連携も拡大している。
高速な演算性能に見合う10ギガビットのネットワークを構築
新たなスーパーコンピュータによって8〜10倍の演算処理能力を確保した金属材料研究所では、より大きなデータの流通を可能にするネットワークが必要になった。同研究所テクニカルセンターの技術専門職員 三浦重幸氏はこう語る。
「そこで、ネットワークのバックボーンとなる幹線部分は10ギガビットの帯域を確保し、ユーザ端末側でも最大1ギガビットのスピードをキープ。さらにウイルスやスパムメール等のチェックを実行する高速で信頼性の高いネットワーク構築を目指しました」
演算速度が上がっても、人間の時間感覚や生活サイクルは変わらない。せっかく計算が速くなっても、データの伝送路であるネットワークが追いついていなければユーザは大きなストレスを感じる。これは研究者の思考を中断することにもつながる。
「当研究所では、現在1日1テラバイトのデータがやり取りされています。しかも、同時にそれを書き込みながらバックアップを図っています。10ギガビットの足回りなら、単純計算すれば1時間当たり約4テラバイトのやり取りができますから、1日には約100テラバイトが可能。5年後の次期システム更改まで、十分なバッファーを確保することができます」(川添教授)
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