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アニメで「ユーティリティ・コンピューティング」を切り開く

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英国のアニメーター+HPの試み「se3d(シード)」 アニメで「ユーティリティ・コンピューティング」を切り開く

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Lights! Camera! Compute!
コンピュータ技術の発達と才能溢れるアーティストたちの活躍によって、年々レベルアップするアニメーションの技術。それをさらに大きく進化させようとする試みが、今、英国ブリストルのHP研究所のサポートで進行中です。プロジェクトの名前は「SE3D(シード)」。アニメーターたちとHPが「ユーティリティ・コンピューティング」の可能性に挑む、新たな挑戦の中身とは‥‥?

アニメーターたちの創造性を最新のテクノロジーでバックアップ

英国ブリストルの「ブリーフ・エンカウンター・ショートフィルム・フェスティバル」は、『ザ・シンプソンズ』の製作者マッド・グローニング氏が「最も優れた新作アニメと才能に出会える最高の場所」と称える注目のイベント。今年は先月(11月)17 〜21日に、HPとエイリアスウェーブフロント社(以下AW社。3DアニメのソフトウェアMayaで有名)の主催で開催されましたが、ここで作品とともに発表され注目を集めたのが、「SE3D(シード)」と名づけられたユニークな実験プロジェクトです。これは10名の英国の精鋭アニメーターたちが、2005年4月に行われる「アニメーティッド・エンカウンター」というイベントに向け、4ヶ月かけてそれぞれのチームで3Dショートフィルムを製作し、その技術サポートをHPとAW社が行うというもの。製作ソフトはMayaが、そして製作プロセスで必要となる膨大な情報処理には、HPが開発した「ユーティリティ・レンダリング・サービス」が活用され、新しい表現とテクノロジーの可能性を探りながら、次時代を担う「ユーティリティ・コンピューティング」の扉を開こうという、非常に画期的な試みです。今回の実験で、参加アニメーターたちが取り組む10本のショートフィルムのレンダリングをサポートしているのは、映画プロデューサーとして、またHPブリストル研究所の研究者の一人としてプロジェクトを支えるスティーブ・ハインド氏。彼は2003 年、研究所のスタッフとともに「ユーティリティ・レンダリング・サービス」のプロトタイプを使って4分間のショートアニメ『The Painter』を製作した経験を活かし、その時にはたった一人の利用しかなかったレンダリング・サービスを、より多くの制作者たちに利用してもらおうと考えています。「今回のプロジェクトによって、レンダリングのユーティリティを進化させること、創造性とテクノロジーの連携によって質の高い作品が生まれることを、大いに期待したいですね」。
Peanut Pete

レンダリングの常識が、このプロジェクトで大きく変わる?!

ちなみに「レンダリング」にはその目的とする品質から「ハードウェアレンダリング」と「ソフトウェアレンダリング」の2種類があり、前者は比較的低品質な「コンピュータゲーム」などの用途、後者はより高品質なクリエイティブが要求される「アニメ」などの分野で活用されています。今回のプロジェクトは、映画『シュレック』や『シャーク・テイル』のような高画質アニメで不可欠な「ソフトウェアレンダリング」の作業で、そこで発生する膨大なコンピュータ処理は、アニメーターの目の前にあるコンピュータだけでは到底追いつかないものです。そこで「離れた場所のコンピュータに処理を肩代わりしてもらう」ことが必要となり、それをスムーズに行うための技術として「ユーティリティ・コンピューティング」の進化が求められているのです。

現状ではこのレンダリングのための処理能力を、大手の製作会社でも十分に持っているとは言えません。たとえばこの夏大ヒットした映画『シュレック2』では、通常のアニメの1.5倍の処理能力が必要でしたが、それを支えたのはHPの技術でした。HPは2004年初め、カリフォルニア州パロアルト研究所に、シュレックの製作会社ドリームワークス社のデータセンターとして1000台のサーバを使ったサーバファームを構築。これによって製作者たちは必要な処理を、問題なく実行することができたのです。

今回の試みは、この事実をさらに進化させ、レンダリングの常識を大きく変えようというもの。ブリストルを拠点に活躍するプロデューサー&俳優で、『Elroy 3,the Potato Head Boy』という作品でSE3Dに参加するベン・ロック氏は、プロジェクトに参加する意義と抱負をこう語っています。「表現しようとすることが頭の中に描かれても、それを実際にスクリーンで表現しようとすると、さまざまな制約があります。なかでもレンダリングは最も頭が痛い問題です。今回のプロジェクトでその問題が大きく前進すれば、制約によって実現されないまま閉じこめられていたアイディアも活かせるようになり、さらに創造性あふれる製作が可能になることでしょう。SE3Dは私にとって非常に重要なチャンスになると思います」。

ところで「ユーティリティ・コンピューティング」のメリットは、レンダリング問題の解決だけではありません。リモート機能を利用することで、アニメーターたちが決まったコンピュータの前にいる必要がなくなり、「自分の好きな場所で創作活動ができるようになった」ことも大きなポイントです。「そこそこの速度のインターネットに接続できる環境なら、どこにいても活動できます」と語るのは、マンチェスターを拠点に活躍するSE3D参加者の一人、マイク・カーウィン氏。彼はより大きなメディアマーケットを目指し、4年間温めてきた創作アイディアをふんだんに盛り込んだ作品でイベントに挑みます。「『ザ・シンプソンズ』や『トイ・ストーリー』は、短編アニメから大ヒット作となりましたが、自分の作品もこの春公開されることで、今後どんな展開となるのかとても楽しみです」。
Green

大量のリソース配分を自動的に調整する新テクノロジー

もちろん制作者たちだけでなく、HPもまた今回のプロジェクトを、非常に大きなメリットが得られるチャンスと捉えています。それは、HPが開発したさまざまな技術を実践的にテストすることで、ユーティリティ・コンピューティングの扉を開く一つの大きな契機になると考えられているから。「これほど大きな規模で、たくさんのテクノロジーを一緒にテストできるチャンスはそうありません」と語るのは、SE3D を担当するHPブリストル研究所のプログラムマネージャ、ピーター・トフト氏。SE3Dのコーディネイターを務めるクレア・レディントン氏も「業界標準となるであろうテクノロジーが、このプロジェクトによって作り出されようとしているのは素晴らしいこと。アニメーターたちはテクノロジーを利用することで創造性を発揮することができ、プログラマたちはアニメーターたちからサービスの動作状況や、どんなニーズが考えられるかといった重要なフィードバックを受けることができる」と、実環境で得られる情報の重要性について述べています。

では、HPは具体的にどんな技術で、SE3Dのアニメーターたちをバックアップしているのでしょう。今回の大きな注目点は、ユーティリティ・レンダリング・サービスのプラットフォームとして、HPブリストル研究所で開発されたサービス・ユーティリティが提供されていることで、それによって「インスタンスを多数実行できること」や「利用可能なリソースをインスタンス間で共有できること」が、実験の大きな焦点となっています。

たとえば、アニメーターのチームにリソースを提供することになっていたマシンが何台か故障してしまったとします。予定していたリソースの提供ができなくなると、アニメーターたちの作業に支障をきたしますが、ここで活躍するのが「Management by Business Objectives(MBO)」と呼ばれるテクノロジーです。MBOが機能することで、あらかじめ約束されていたリソースの割り当てが行われなかった時にも、サービスユーティリティが負うペナルティをもとに、効率的なリソースの割り当てが自動的に再調整され、最適なリソース配分を行うことができるのです。この機能を支えているのは、どのサービスがどのリソースを取得するかをマーケットベースで決定する「Sumatra and Tycoon」と呼ばれるメカニズム。この機能が働くことによって、ユーザーは必要な時にリソースを購入したり、将来使用する予定のリソースをあらかじめ購入することが可能になります。また複数バージョンのアニメーション入力データを効率的に保存するために、「Elephant Store」と名づけられたテクノロジーが採用され、リモートでのスムーズな通信に大きな力を発揮するのも見逃せないところ。こうしたソフトウェアのコンポーネントはシステムの中核をなす「Smart Frog」と呼ばれる技術で制御され、サービス・ユーティリティやユーティリティ・レンダリング・サービスの自動的な配備・管理、リソースの割り当てや障害への対処などはすべてSmart Frogのコントロール機能によって稼働します。これらのさまざまな新テクノロジーが適切に機能することが実証されれば、ユーティリティ・コンピューティングの進化に向け、HPもアニメーション界も、大きな一歩を踏み出すことになるのです。
The Painter

高い「技術」がクオリティの高いアニメーションを支える

SE3Dの試みは、アニメーターやHPといった当事者たち以外からも、大きな注目を集めています。メディアの関心も大きく、現在CS放送のThe Discovery Channelでは、2人のアニメーターの製作状況の取材が行われています。また、デイビッド・スプロクストン氏(アードマン・アニメーション社CEO)、シェリー・ペイジ氏(ドリームワークス社ヨーロッパ部門代表)、そして英国アニメーション業界の著名人たちが名を連ねる顧問委員会も、SE3Dで創造性とテクノロジーが融合するまったく新しいモデルのあり方が示されることに期待しています。現在、プロジェクトはすでに始動しており、新しいレンダリング・ファームでの実験もまさに進行中。もちろんアニメーションの技術は奥深いものですから、この先もさまざまな試みへの挑戦が行われていくことでしょう。テクノロジーによる、アニメーターたちの創造性の支援はこれからも続き、クオリティの高いアニメーションを創出するために、技術の重要性はますます高まっていくことになりそうです。
 
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