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企業が自身の価値を高め、市場での優位性を獲得していくには、「ITをビジネス戦略に活かし、イノベーションを実現していかなければならない」……先月の特集では、そのためにCIOやIT部門は、どんな考え方に基づき、どんな点に留意しながら仕事に取り組んでいくべきかについて述べた。今回は、そうしたイノベーション実現を根底から支えることになる「人材」や「ITスキル」を「どう育てるのか」について考察していく。
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ディスカッションではまず、多くの企業が今、「IT部門の人材・スキル育成」に頭を悩ませ、「コスト削減やセキュリティ等と並ぶ重要案件」だと捉えている調査結果について、栗原氏が言及。田口氏も「ユーザー企業、ITベンダーともに、求められる人材を確保できていないし、IT担当者の多くは業務知識が乏しいのが実情。例外はあるが、大半は非常に厳しい状況と言って過言ではない」と警鐘を鳴らす。ではITの現場では、具体的にどんな問題や課題が浮上し、なぜ企業はその対処に苦慮しているのだろうか? 人材問題に詳しい田口氏の発言から、問題点をいくつか列挙し、その背景や実情などについて説明しよう。
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【問題点1】90年代からの「過度なITアウトソーシング化」で、IT部門の組織の空洞化、スキル低下が進行
自社内で「IT技術者を育て、キャリアアップさせる」という80年代まで主流だった考え方が、90年代には「ITはできるだけアウトソーシングすべし」という流れへと変化。少数の企画担当者を除く多くの人員を子会社に移し、システムやITインフラの企画・構築、運用、サポートサービスに至るまで、子会社・外注先に委ねる傾向が強まった。これによって、企業内にはそれらを担い得る人材が不在となり、ITの空洞化、スキル低下が進行。ITの一般化や、事業部門がIT部門を介さずに直接IT企業に発注する動きが、それに拍車をかけた。2000年頃からは一転して、ITの担うべき役割が急速に増大。ITを活用しての目標達成が求められるが、社内のIT部門では人数も力も不足し、迅速に品質の高いシステムを構築するようなニーズに対応できず、結果的にビジネスチャンスを逸してしまっている。
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【問題点2】事業部門から言われたことを粛々とこなす風潮が、IT部門に定着
従来からの基幹システムに加え、電子メールやインターネットなどのITが急速に浸透。ただでさえ人数の少ないIT部門は、ITの進化や事業部門のセキュリティサポートなどの問題に忙殺され、事業内容にコミットできる余裕がなくなった。その結果、IT部門は「各事業部門の要望に粛々と応えればよい」という位置づけにされがちとなり、ますます人を育てられない職場環境が定着してしまった。
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【問題点3】優秀な人材を採用してもうまく使いこなせない
例えば、80年代半ば頃、金融機関はコンピュータサイエンスを学んだ学生を競って採用。最先端の金融工学を駆使した新しい顧客サービスや商品などの誕生が期待されたが、そうした結果には結びつかなかった。バブル崩壊というマクロな経済状況もあるが、トップがITの価値を十分に理解していなかった問題も大きい。結果的に彼らの多くは、システム運用や外注管理などの仕事に従事するか、転職することになったが、同様の状況は、その他の業種でも決して珍しくない。
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【問題点4】人材育成のための予算が乏しい
これまで企業内でIT人材を育成する必要性が語られてこなかったため、そもそも育成のための予算が極端に少ない。JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)の調査によると、1000人以上の大企業で、情報システム要員のための教育予算を取っている企業は40%強、1000人未満の中堅企業は20%前後。予算を導入している大企業の一人あたりの年間教育予算は約17万5000円(一ヶ月あたり約1万5000円)。また別の調査では、ITベンダーでは単純平均で一人あたり年間数万円という結果となっている。
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【問題点5】IT技術者の仕事が見えにくい
IT部門の仕事は、他の事業部門の仕事に比べ、「具体的に何をするのか」見えにくい面がある。その背景の一つは、ITが複雑化し、仕事の流れや役割が理解しにくくなってきていること。もう一つは、日本では昔からITの仕事は匿名性を重視する風潮があり、「世の中で稼働しているある優秀なシステムを、どの企業のどんなプロジェクトが作ったのか」あまり情報公開されない、という側面が挙げられる。車の設計者、著名な建物の建築家のように、開発の事実やストーリーがマスコミなどで取り上げられることが多くなれば、具体的なイメージもわきやすくなり、職業として目指す人も増えると考えられるのだが……。
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【問題点6】「就きたい職種」として学生がITに目を向けなくなってきた
「ITの仕事は、きつい、給料が安い、帰れない」というイメージが少なからず学生の間ではあるらしい。確かに「きつい」「帰れない」は実態として否めない面もあるが、それはIT職に限ったことではない。しかも給料に関していえば、実際には他に比べむしろ高め。それなのにマイナス面だけが強調されているきらいがあり、昨今、東大で「情報系コース進学者の定員割れ」が起こったように、学生の「就きたい職種」として、人気が低下している傾向がある。
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【問題点7】ユーザー企業のIT部門には、もともとITに従事するつもりではない人が配属されるケースが多く、スキルアップなどのモチベーションが低い。
志望した部署でなく、しかも企業内でIT部門が正当に評価されないような状況にあれば、スキルアップへの意欲を持つことは難しい。
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【問題点8】ユーザー企業のIT技術者は、「ITのプロ」としてどうキャリアアップするのか、ロードマップを描きにくい。
IT部門に入っても、実際のシステム構築は外部にまかせることになると、ITスキルを磨くことができず、例えば、本社で企画をしたり、社員全員に共通のセキュリティや電子メールなどのインフラをいきわたらせるような仕事に従事したとしても、ITという視点で、「この分野のプロだ」というふうには答えにくい。プロフェッショナルなスキルが身に付かないので、キャリアアップの道筋は極めて不透明。こうした状況では、基本的に優秀な人材が育ちにくい。
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【問題点9】最先端のIT知識を提供する教育システムの欠如。
ITが高度化・複雑化。様々な製品やサービスの知識を踏まえながら、システム構築の提案、構築、運用ができるIT技術者を育てるのが難しくなってきている。技術が急激に変わるので、上司も何を教えていいかわからないし、最新の知識を教えるカリキュラムを持った信頼できる教育機関などもあまりない。また、日本の大学ではコンピュータそのものを研究するコンピュータサイエンスが主流で、米国のように細分化されていない(米国には、コンピュータサイエンスに加えて、システム構築を考える「ソフトウェアエンジニアリング」、コンピュータを物理的に追求する「コンピュータエンジニアリング」、コンピュータの活用法を研究する「インフォメーションシステム」がある)など、学問として学ぶシステムの確立も遅れている。 ≫ 【Chapter
2】 なぜ今、人材・スキル育成に力を注ぐべきなのか |
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