京都国際文化交流財団(以下、財団)とHPは、京都に残る国宝や重要文化財を高精細のデジタル画像として保管し、高品質の複製を製作するデジタルアーカイブ事業の一環として、安土桃山〜江戸時代の画家、海北友松作の重要文化財、「雲龍図屏風」の高精細複製を制作し、京都・北野天満宮に奉納しました。
海北友松の「雲龍図屏風」は、2匹の龍が空を生き生きと舞う様子を和紙に墨で描いた力強い作品です。「おどろおどろしさではなく、どこかに飄逸(ひょういつ)な趣きがただよっており・・・・・・」(文化庁HPによる説明)と評されるこの作品は、海北友松の名を轟かせた作品ともなりました。
式終了後、場所を本殿楽の間に移し、重要文化財「雲龍図屏風」と高精細複製「雲龍図屏風」を同時お披露目しました。オリジナルの持つ龍のダイナミックな動きが高精細複製でも、まったく同じように再現されていることが、2枚並べることにより、より鮮明になりました。特に、本来プリンティングでは難しいとされていた墨の微妙な濃淡や、色調の具合が絶妙に再現されていることに対し、橘重十九宮司は「寸分違わぬものになった」と自信を見せていました。 下記の写真で見ると、異なる蛍光灯が当てられていることから、色合いに変化が見られますが、日本HPの新井啓之は「太陽光の下や、高精彩複製を本来安置する予定だった薄暗い本殿で見比べると、寸分違わないものになります」と、限りなくオリジナルに等しい複製であると語りました。場内からは「2つのそれはどちらが複製品であるのか見分けがつかない」という言葉も漏れたほどです。
さて、この高精細複製画はどのように制作されたのでしょうか。まずは縦149.4cm、横337.5cmのこの屏風を再現するために屏風全体を48分割し、3億画素の高解像度でデジタル撮影を行うことから始まります。その後はモニター上で修正した画像を和紙で忠実に再現するために、カラーマッチングやカラープロファイリングの技術を駆使した上で、専用和紙にHPの大判プリンタ「HP Designjet 5500ps-UV」を用いて出力されるのです。
インクは、発色の調整が難しいとされているUV水性顔料を使用していますが、HP独自のUVインクは耐光性に優れ、HPの純正紙を使用した場合は100年間、色褪せることがないという長所があります。古来の日本の色味は大変奥深く、黒一つとっても、HPは青墨や赤墨などを表現しなくてはなりませんでした。また、個人の瞳の色によっても、見える色味にはずれが生じるため、光学測定器と人の目の両方を使用し、色合わせをしました。これらの工程を経て、HPの持つ世界的な最先端技術と日本文化が融合しました。 複製にあたり、もっとも難しいとされた色合わせを担当した、グラフィックデザイナーである山口晃吏氏は、「HPは、文化・芸術への造詣が深く、日本の文化を継承していきたいという我々の意向とHPの企業としての姿勢が同じだったから」と述べたのに対し、HPのブランドマーケティング担当副社長 ゲーリー・エリオットは「日本の国宝級の保存に、世界中のHP関係者が微力ながらも協力させていただけたことを誇りに思います」と応えました。
日本の文化財には木や紙などが密接に関わっており、朽ちやすい芸術品として捉えられていました。しかし、最先端のテクノロジーにより、現状を保存し、いつでもデータとして取り出すことを可能にしました。 また、宮司・橘重十九氏は「たくさんの文化財を所有している当宮が、これを機に海外に日本文化を紹介する先駆けとなりたい。同時に、感謝、慈悲、思いやりなどの大和心(やまとごころ)も伝わればと思います」と語られています。これまでは貸し出しだけでなく公開にも規制の厳しかった原画の代わりとして、今後は複製を教育機関等へ積極的に貸し出し、日本文化に触れる機会を増やしていきたい意向を発表しました。 先人から受け継いだ素晴らしい文化遺産は、人々の目に実際に触れてこそ、感動を呼ぶものとなります。しかし、年月は日本の美術作品の劣化を刻一刻と加速させています。HPが支援するデジタルアーカイブ事業は、文化遺産に触れる機会の減少に歯止めをかけ、「日本文化伝承の架け橋」となるでしょう。