2007年3月8日より大阪・サントリーミュージアム「天保山」で、スペイン画家 サルバドール・ダリ(1904-1989年)の生誕100周年を記念した展覧会「生誕100年記念 ダリ展‐創造する多面体」が開催されています。展覧会では、ダリの油彩画、手稿など約180点が展示。その中の1点であるダリの名作「ヴィーナスの夢」は、特定期間HPプリンタで製作された高精細複製が会場を飾ることとなりました。本展は、大阪、名古屋、札幌と約半年間をかけて日本を巡回します。
シュルレアリスムとして知られているダリの作品が一堂に介した本展の特徴は、彼の芸術家としてのあらゆる才能を伺うことのできる多彩な展示にあります。絵画はもちろん、デザイナーとしての顔も持っていたダリならではの遊び心あふれるユニークな作品の数々に魅了されるでしょう。
また、歪んだ時計で知られる「ヴィーナスの夢」(1939年)は開催期間中、複製品が展示されるという新しい試みが行われています。本作品は広島県美術館が所蔵、貸し出しを行っていますが、一部期間に限り、返却をしなければなりません。そこで、デジタルファインアート(デジタル美術)の技術で世界の多方面から注目されているHPのプリンタによって出力されたオリジナルに限りなく近い高精細複製を、会場に飾るプロジェクトが行われることになったのです。
この高精細複製は大阪・名古屋・札幌のどの会場でも本物が広島県美術館に返却されている期間中は、展示されることになっています。
HPは、1995年より、ロンドンのナショナルギャラリーにおいて高性能のデジタルカメラで撮影、データ保存された美術品を大判プリンタで出力し、高精細複製として販売する事業をサポートしてきました。本展への参加においても、その実績が評価されたといえるでしょう。
今回、高精細複製の製作に使用したのは最新のグラフィック向けプリンタ「HP Designjet Z2100」。さらに、「ヴィーナスの夢」のグラデーションや繊細かつヴィヴィッドな色遣いを再現したのは、100年〜200年の耐光性(HP純正用紙使用時)が認められた8色インクシステム。正確なカラープロファイルを作成することが可能なテクノロジーを採用した分光測光器を、インクジェット方式の大判カラープリンタとして初めて内蔵しています。
このように大きく進化したプリンタを用い、オリジナルの作品サイズ240×480cm(4分割)を、本プロジェクトでは200×400cmのサイズで複製させました。はじめにオリジナルを1億3500万画素のデジタルカメラで撮影し、キャプチャー。その後、グラフィックデザイナー・山口晃吏氏(京都市在住)によりカラーマッチングが行われ、よりオリジナルの質感に近づけるためHP純正用紙のキャンバスに出力されました。
カラーマッチングを担当した山口氏は、「HP Designjet Z2100」の使用感を、「インクのにじみがなく、ダリ独自の筆遣いまで鮮明に再現できる最高のプリンタだ」と評価し、「プリンタに安定性があるので何度でも同じ色味が出せるのが素晴らしい。また、適したキャンバス地(HP製)に出力することにより、油彩独特のテリや凹凸の盛り上がりまで再現できた」と、語りました。
日本での開催にあたり、スペイン・ダリ財団やアメリカ・ダリ美術館からもゲストが来日。油彩画や手稿など約180点ものオリジナルの中に、高精細複製を展示するという試みは、話題を集め、当日はたくさんのマスコミ関係者も取材に訪れていました。ダリ美術館 ダーク・アームストロング氏に、高精細複製の感想をお伺いしたところ、即座に「Wonderful!!」との回答が。さらに「日本にあるためオリジナルの「ヴィーナスの夢」はまだ見たことがないのですが、それでも高精細複製のクオリティの高さはよく分かりました。1930年代のものですが、時を経た作品の状態を非常によく理解していると思います。もし、最先端の技術を取り入れてきたダリが今も生きていたなら、興味を示したのではないでしょうか。もしかしたら、デジタルアートにダリが手を加えた作品が生まれたかもしれませんね」と、感想を述べました。また、これからは開催期間との調整がつかず、貸し出しが困難な作品の代わりとして高精細複製を有効活用することにも関心を寄せていました。
このように、HP大判プリンタはますますアート作品へも活用されるでしょう。また、今後、多くの文化的芸術作品のオリジナルが時を経て修復を必要としたり、保存が困難になることが予想されます。そのような事態に備え、現在の状態でアーカイブすることにより、私たちは未来へと貴重な文化をつないでいくことができます。HPは芸術協力やデジタルアーカイブへの積極的な取り組みを通じ、大切な文化を保存し、将来に継承する活動をこれからも続けていきます。