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HP and Microsoft

総括:ITで切り拓く、中小・中堅企業の未来! 〜新しい価値創造のために、今、ITで何をすべきか?〜

経営コンサルタントが語る"経営とITのツボ"

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【Chapter 2】読者からのQ&A

経営立て直しに、ゼロスタートも視野に入れる

(編集部)これまでの連載で寄せられた読者の皆さまのアンケートから、代表的なものを幾つか選んでお聞きしたいと思います。まず、中小・中堅企業のIT導入の手順、既存のIT資産に応じた段階的な取り組みが可能か、などといった点について悩まれている方が多いようですが、考え方の切り口は何かありませんか。

森戸 ここに経済産業省出展の資料(図1*)があります。これを見るとIT化のステップをステージ1からステージ4まで4段階に定義しています。最初の2つのステージでは、企業内の特定業務のIT化、つまり部門最適を目的とした “システム化”の時代、とされています。 ステージ3と4では、異なる業務の壁を越え、更には企業の壁も越えた連携や、統合といった“経営”の時代、と定義付けられています。 ここまで変化の激しい時代にあって、特に私が申し上げたいのは、企業として過去の既存資産にどこまで囚われるかということです。パラダイムの変化点と言われるくらいに大きな時代の変化を感じている中で、大事なのは過去の資産よりも市場の価値観に即したビジネスモデルを作っていくことであって、既存の資産(つまり“情報”)よりも市場からのタイムリーな情報を重視するという経営判断も必要になります。つまり、大手企業でも中小・中堅企業でも、新しい価値提供を目指すのであれば、過去の業務プロセスやIT資産に捕らわれずに積極的にステージ3からスタートしてもよいと思います。ベンチャー企業と中小・中堅企業の違いなどについてもよく聞かれますが、簡単に言うと、ゼロベースで考えるのがベンチャー企業で、過去の資産を持ちながら経営改革を考えるのが中小・中堅企業だともお答えしています。しかし、最近では、中小・中堅企業も第2創業的にゼロベースの考え方を持つ、という思いきった判断も経営者に求められるようになってきています。
  経済産業省出展資料
  *出展:経済産業省 情報経済アウトルックより抜粋

(編集部)その先の経営改革についての考え方をご説明願えますか。

森戸 まず、戦略として、独自営業路線でいくのか、大手企業のビジネスパートナーとしていくのかという部分を明確にすることが重要と思います。企業間取引の15%がインターネットを利用した電子商取引になっている現代では大手企業のビジネスパートナーとなるためにはサプライチェーンの輪の中に入ることが最低限必要になります。IT化のステージの表で見るとステージ4にあたります。この場合は、取引企業から自分たちは何を求められているのかを念頭にEDIシステムでの連携を考えていくことになります。一方、大手企業との競合も考えられる独り立ちを目指す企業は、“市場から選ばれる理由”をしっかりと考えて営業戦略を打ち立てなければなりません。大手企業と比較して資金力に乏しい中小・中堅企業が市場で勝ち抜いていくためには、中小企業の強みである機動性を十分に発揮する必要があります。市場の変化に柔軟に対応して、価値創造という部分に積極的に取り組む必要があります。まずは、どのような戦略をとるかによって、ITの活用方法も異なってくることを意識しておくべきです。

(編集部)これまでの連載で、様々なIT化のメリットについて、解説頂きましたが、デメリットについても知っておきたい、という意見が読者からあげられました。 どのようにお考えになりますか。

森戸 7月号や、9月号でも解説したように、IT化の最大のメリットは情報を共有して活用できるということです。例えば、サーバを導入してデータを一元化するだけでも様々なメリットがあります。今年の4月に完全施行された個人情報保護法に対応するためには、お客さまから預かっている個人情報の保護管理も厳しく規定されています。ここで言う保護管理というのは、お客さまからの個人情報の変更、削除依頼にも即座に対応できる管理体制を指しています。情報があちらこちらのPCに散在しているだけで整合性をとるためのコストが掛かってしまいます。サーバを導入して一元管理するだけでも、データのバックアップに要するコストも削減されますし、何よりも取引先やお客さまからの信頼性を高めるという観点からも有効と言えます。

一方、サーバ導入そのものではなく、“情報共有化”自体に問題があるとすれば、何の戦略も無く情報共有すると情報過多で社員が考えるということを止めてしまう危険性があると思います。数年前までは、情報機器の操作能力に起因するデジタルデバイド* の問題が各種メディアを賑わせていませしたが、私は今、情報を如何に精査して活用できるかというインフォメーションデバイドを懸念しています。インターネットや社内情報などを日々見るだけで知っている気になる、あるいは仕事をしている気になってしまうという社員が増えています。サーバ導入などで情報を共有させるときには、個々の社員に必要な情報を最初に絞り込むということが重要と思います。要は情報の選択と集中です。

 
* デジタルデバイドとは、パソコンやインターネットなどの情報技術(IT)を使いこなせる者と使いこなせない者の間に生じる、待遇や貧富、機会の格差。

(編集部)次はIT活用における落とし穴はとはどのようなことでしょうか?

森戸 先ほどいたずらに莫大な情報を共有してはいけないとお話しました。「情報を精査するのは面倒なのでサーバに放り込んで情報共有している」、これが一番危険な状況であり、実は多くの大手企業もそのような情報運用になっている場合が多いと感じています。同じようなことが中小・中堅企業の場合にも言えるのではないでしょうか。例えば、システム活用のためのマニュアルというのは、ITツールの使い方ではなくて情報の絞り込み方法と絞り込まれた情報の読み方になっている必要があります。

大手企業との比較は一概にはできないものの、やはり中小・中堅企業は、社員が自分で情報を精査して活用していくということに慣れていません。ですから全ての情報を共有するのではなく、IT導入の時点で、必要な情報は何なのか、不必要な情報がないか、また誰にとって必要な情報なのか、情報をもとに誰がどのように動くのかを十分に考えることが大切です。

“誰に対してどのような情報をみせるか“という部分でのサーバにおける情報化基盤には、「ActiveDirectory」* などの機能を活用するといいと思います。“多くの情報を多次元で分析できる“といった大手企業のやり方を中小・中堅企業が模倣しても仕方がないとも思っています。中小・中堅企業が機動性を持ってビジネスモデルを創り出していくためには、市場からのタイムリーな情報を必要な社員が有効活用できるような形を作り出すことが重要です。

もともと人間の情報処理能力には限りがあります。中小・中堅企業は、少ない社員数で大手企業と勝負しないといけないので効率の良い情報共有を考えてください。戦略も無く共有している情報を見るだけで、何となく仕事をしている気になってしまう社員を増やさないためにも、情報共有のデザイン構築には充分時間をかけてください。

* Active Directoryとは、マイクロソフトWindows OSに搭載されているディレクトリサービス。ネットワーク上に存在するサーバ、クライアント、プリンタなどのハードウェア資源や、それらを使用するユーザの属性、アクセス権などの情報を一元管理することができる。
 

(編集部)次は、システムやアプリケーションの導入についての検証ノウハウや人材教育についてどう行なっていけばよいかというご質問です。

森戸 システムやアプリケーションの導入が既存の業務プロセスにどれくらいの影響を及ぼすのかということの検証はどの会社もされていると思いますが、実際にそのシステムやアプリケーションを活用する社員の業務にどれくらいの付加価値を与えてくれるのかということも考えないといけません。また、社員の教育に関しては、情報活用に対する意識をいかに変えていくかがポイントとなります。システムを導入した際のトレーニングの多くはシステムの操作研修になっています。情報を活用できない理由が、社員のリテラシーの問題と考えて操作を教えている場合もあります。ただ、そのシステム導入の意味や情報活用による最終的な成果をイメージさせることも重要になります。「これを操作できるようになりなさい」ではなく、「この情報を見てどう行動しなさい」といった指導まで含めて行っている企業はIT導入に成功されています。


(編集部)コストとテクノロジーのバランスはどう考えたらよいですか。

森戸 IT導入の費用対効果を定量的な部分で説明するとすれば、単純に“IT導入後の売上変化”で見るしかありません。ただし、私はB to C型のWeb販売を推奨している訳ではありません。すべてがWeb販売で解決するのであれば、営業担当者は必要なくなります。営業担当者が、IT化によりお客さまが必要としている情報を認識して、それを提供しつつ、新しいニーズを聞き出すということで情報の良い循環を生み出すことも可能になります。これらの動きにより、IT導入の効果は高まっていきます。従来型の営業担当者がカタログベースでお客さまに情報を提供するだけでは、モノは売れない時代になっています。社員には、情報の価値を認識させて、お客さまに価値を伝えるということの重要性を理解させるためことで成果も出てきます。テクノロジーは、これらの市場変化に対応するためのツールになってきています。

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