テレビドラマ『デスノート』制作の現場を支えたHP Workstation Zシリーズ

株式会社 デジタル・フロンティア http://www.dfx.co.jp

 

株式会社デジタル・フロンティア
株式会社デジタル・フロンティア

1994年に 株式会社 TYO(ティー・ワイ・オー) 映像事業室の1セクションとして活動をスタートし、2000年5月設立された株式会社デジタル・フロンティア (以下、DF)は、3DCG アニメーションから実写 VFX まで、ハイクオリティな映像を生み出し続けている、日本を代表する制作会社である。

DF では、毎週放映されるテレビドラマにスピードにあわせて、今までの制作ワークフローを見直し、高い品質を保ちながら、3DCG を制作したという。そして、この制作プラットフォームを支えたのがHP Workstation Zシリーズである。本特集では、DF社のテレビドラマ『デスノート』CG制作チームに、制作の裏側とHP Workstation Zシリーズ採用の背景を聞いた。

ドラマの制作スピードに合わせるため、ワークフローを大幅に短縮化

- ドラマ 『デスノート』のCG制作に至るまでの背景と課題をご紹介ください。


執行役員 CG制作本部 制作部 部長
プロデューサー 鈴木 伸広 氏

 
 


CG制作本部 ディレクター
渡辺 伸次 氏

 

鈴木氏(DF):
日本テレビさんから、ドラマ『デスノート』でのCG制作の話があったのは2015年4月でした。DFは、映画版『デスノート』のCGを担当していたので、そのつながりから、「ドラマでも、CGキャラクターのリュークとレムを出したい」という依頼があったのが始まりです。

打ち合わせの中で、監督からは「1話あたりCGで50カットは欲しい」という意向をいただきました。映画版では、すべてあわせて70カットでしたので毎週50カットは多いなという印象でした。さらに初回と最終話は、特別枠の90分ということでさらにカット数が増えるかもしれないという話もありました。実際に第1話は、最終的に90カットを超えましたから、それだけで映画版のCGカット数を超えています。

そのため、今まで通りのワークフローでは不可能であろうと考え、社内で検討を開始しました。

DFでは、これまで主にMaya (Autodesk社の3D CGソフトウェア) を使ってCGを制作していました。しかし、それでは今回は間に合わないだろうという結論に至り、利用することになったのが、ゲーム開発用のリアルタイムエンジン『Unreal Engine 4 (アンリアルエンジン4)』(注: 米エピックゲームズが開発したゲームエンジン(統合開発環境プラットフォーム。以下、アンリアル)です。

渡辺氏(DF):
DFの研究・開発部門ではアニメ制作の手法について日頃から研究を重ねています。アンリアルのアニメ制作への応用についても研究を重ねてきました。今回その経験を生かした形になります。アンリアルによるアニメーションのクオリティの高さも採用に至った大きな理由です。

当初はゲーム開発用のエンジンを利用することには抵抗がありました。最高のクオリティを目指すのであれば、今まで通りの制作方法をとるべきではないかという考えがあったからです。しかし、テレビの連続ドラマという制作期間の短さを考えると、これまでの方法では難しいことは明らかですし、新たな手法にチャレンジする良いきっかけだと考えるようになりました。アンリアルを実際使ってみて、キャラクターの動きやライティングなどを最終的な絵を見ながらリアルタイムに検討できるなど、今までに無い効率的な手法で制作を進めることができました。

鈴木氏(DF):
CGキャラクターの動きにはモーションキャプチャーを活用しています。当初は制作期間の短さを考えて実写撮影と同時にモーションキャプチャーの撮影を行うことを検討していましたが、実写撮影を優先してスケジュールを組む必要があり、最終的には、撮影・編集まで終わった実写素材を受け取り、その内容を見ながらアクターさんに演技をしてもらって、モーションキャプチャーを実行するというワークフローとなりました。そこでできあがった素材を基にして、アンリアルを使ってCGキャラクターによるアニメーションを制作していくという流れです。

 

 

CGキャラクターの表情にもモーションキャプチャーを採用しています。従来のようにマーカーを付けて顔の動きをキャプチャーするのではなく、ヘッドマウントカメラで表情を撮影して顔の動きを取り込む方法を採用しています。撮影した素材を翌日にはCGのチームに引き渡すという通常ではありえないスピードで作業をしました。 ドラマの放映に間に合わせるためには、このワークフローをいかに短縮するかということが重要だったのです。

CGのクオリティは、映画『デスノート』を基準に

- ドラマの撮影が始まってからのCG制作現場はどうでしたか?

鈴木氏(DF):
制作現場としまして、アニメーション、カメラのトラッキング、コンポジット(合成)、アンリアル、モーションキャプチャーなどをチームで分担し作業を進めました。全体で延べ約20名のチームとなりましたが、通常の映画制作に関わる人数よりは、少人数でした。

映画版の制作には3?4ヶ月をかけましたが、今回はドラマで毎週放送されるため、感覚的には、映画制作の1/10くらいの短い期間で制作をしていたという感じです。

渡辺氏(DF):
テレビ放映を観られる方は、映画『デスノート』を基準にCGのクオリティを判断されます。そして、ドラマは週一回の放映ですから、制作スピードも最重視されます。そのバランスを取って制作したのが、今回のCGとなります。

当初アンリアルは、今までのMayaで制作していく手法には当てはまらないところも多くあり、試行錯誤がありました。しかし、日が経つにつれて経験値も上がり、スピードも、そしてクオリティも上がっていきました。最終話の火事のシーンでは、炎の合成に時間がかかりましたが、映画よりクオリティの高いシーンになったと思っています。

- 制作の進行管理上、苦労された点はどこでしょうか?

吉井氏(DF):
やはり毎週納品があることですね。撮影ありきでスケジュールが決まりますから、それにあわせて、モーションキャプチャーの日程を決めなければなりません。完成品を納品する前に、アニマティクス(注:制作のプリプロダクションで、各シーンを検討のために簡単に映像化したもの) を納品します。それにあわせて、TV局では仮編集、効果音などの音入れなどを行って、DFに戻されます。それからCGを仕上げて、完成品を納品します。そのあとに、TV局でアフレコや編集をし、放映することになります。これらのスケジュールの段取りを組み立てて、管理することが大変でした。


CG制作本部 制作部
プロダクションマネージャー 吉井 博之 氏

 
 

渡辺氏(DF):
シナリオがなかなか完成しないために、スケジュールを組むことができないという課題もありました。シナリオ完成後、ドラマ制作関係者が集まり、役割分担を行います。そこで、監督から、「この部分はCGで」という依頼を受けて、DFのCGディレクターが社内に持ち帰り、指示を出します。しかし、シナリオができあがってこないと、待っているだけという状況が続くことにもなるのです。

初回は、撮影から放送まで2週間あったので、その間にCG制作を行えばよかったのですが、徐々にその期間が短くなり、最終話では、放送日の週に撮影があり、3日でCGカットを仕上げるといったこともありました。かといって、クオリティを落とすことはできません。

鈴木氏(DF):
最終話は放映前日の午前3時に納品し、監督の返事が返ってきたのが午前5時という非常にタイトなスケジュールでした。

日本HPの手厚いケア、早いレスポンス、ユーザーの声を聞くスピードが採用の決め手

- HP Workstation ZシリーズとGeForce® 採用の背景をご紹介ください

 


鈴木氏(DF):
元々、HPのワークステーション製品は導入していたのでお付き合いはありました。今回、アンリアルを使った新たな手法へのチャレンジが必要になるということ、そして撮影開始が近づいているということで、機材面でのサポートを受けられないかという相談をしたところ、早々にワークステーションのハイスペックモデルのHP Z640とZ820をご提供いただくことができました。

渡辺氏(DF):
私は以前、別のプロジェクトでも日本HPに支援をいただいたことがあったのですが、早いレスポンス、手厚いケア、そして何よりユーザーの声をダイレクトに拾ってくれるという印象があったので、相談させていただきました。今回も、アンリアルを使って制作をするとお伝えしたところ、必要なスペックを直ぐにご理解いただき、素早い対応をしていただけました。

また、日本HPのパートナーである株式会社 エルザ ジャパンとの協力体制も重要でした。アンリアルは元々3DCGゲームの開発ツールなので、ワークステーション用のQuadroグラフィックよりゲーム用のGeForceグラフィックの方が相性が良いといわれています。とはいえGeForceが搭載されているゲーム用PCではシステム全体の性能や安定性に難があります。今回はワークステーションとGeForceを組み合わせたシステムが必要でした。以前、自社でワークステーションにグラフィックを組み込んで使用したところ、電源周りの対応がうまく処理できず、システムが止まってしまうことがありました。今回のワークフローでは性能だけで無く、システムの安定性も重要になると理解していたので、GeForceの組み込みに関してもメーカーのサポートが必須と考えていました。エルザ ジャパンではHPのワークステーションにGeForceを組み込み、メーカー保障を付けて販売しており、DFでも導入実績があるので安心してお任せすることができました。


CG制作本部 制作部
MC室 室長 越田 弘毅 氏

 
 

越田氏(DF):
CGキャラクターと実写をスムースに合成するため、撮影時の周辺環境を丸ごと3Dスキャンしています。今回3Dレーザースキャナーとフォトベースの3Dスキャナーの2種類を採用していますが、主に活躍したのがフォトベースのSmart 3D Captureというソフトです。実写が撮影されたセットやロケ現場を、一眼レフカメラで現場ごとにで数百枚単位で撮影して取り込み、コンピュータ上にバーチャルなセットを再現します。このバーチャルセット上でCGキャラクターに動きをつけることで、最終的にスムースに実写合成が可能になります。このソフトで高解像度の写真データを合成する処理にグラフィックカードの性能が大きく影響します。GPUに搭載されたCUDAコアを使い並列処理をしています。 今回採用したGeForce GTX 780Tiはゲーム用のグラフィックにもかかわらず高速で安定稼動してくれました。ソフトウェア上で、空中三角測量と言う手法で各画像の撮影位置を3D空間上に算出していくのですが、以前は計算に40分ほどかかっていましたが、GeForce GTX780Tiでは約10分で処理が終わりました。作業時間が1/4になったことでトライアンドエラーの回数も増え、作品のクオリティを高めることに貢献できたと思います。

 

 

 

- 制作プラットフォームにHP Workstation Zシリーズを使用した感想はいかがでしたでしょうか?

 


HP Z640 Workstation

 

越田氏(DF):
HP Workstation Zシリーズで気に入っているところは、筐体上部のハンドルのおかげで移動させやすく、しかもデザインがカッコいいところです。もちろんメンテナンス性の高さや安定性、他社製品に比較して故障率が低い点も高く評価しています。私が別の作業で使用しているHPのワークステーションは4、5年前に導入したシステムですが、常時90%程度の稼働率ながら故障せずに活躍しています。今回の制作で使用したHP Z820とZ640 も、トラブルも無く、性能を90%以上フルに使い切って作業できました。

渡辺氏(DF):
他社製品では、ほんの少しパーツの抜き差しをしただけで部品が壊れる場合もありますが、HPのワークステーションではそんなことはまったくなく、頑丈なところも大きなポイントです。また、製品購入前から、購入後も含めて、サポートが手厚い所も高い評価ポイントと言えます。DF規模の会社ですと、サポート力が弱いと致命的になりますから。

- 最後に、今後の予定をお聞かせください。

 

 

鈴木氏(DF):
テレビの連続ドラマの中にCGキャラクター を組み込ませることができたのは大きな成果だと思っています。通常の制作フローでは無理ですし、実際にチャレンジしようとしているプロダクションも無いと思います。このような新しいことができたことは大きな収穫になりました。今回作り上げたシステムには、まだまだいろいろな可能性があるので、さらに広く利用を検討していきたいと思います。

渡辺氏(DF):
リアルタイムでクオリティの高いCGを作ることができたと思っていますので、バーチャルリアリティや映画に利用するなどの幅が広がってくると思います。今回ベースとなったデータは、10年前の劇場版用に作成したものをいくつか使用しています。そのため、アンリアル用にもっと最適化した方がよいと思われるところがたくさんあったので、改善していきたいですね。

- 本日は、お忙しいところ、ありがとうございました。

今回、日本HPパートナーにとって、なかなか知ることができないテレビドラマ制作の裏側、そして、CG制作の現場を紹介することができた。そのシステムのインフラを支える信頼性の高いプラットフォームであるHP Workstation Zシリーズ、そして、グラフィックスに対するスペシャリティを活かし、お客様を支えるエルザ ジャパン社による活動は、日本HPパートナーにとって、普段接する業種が違ったとしても、学ぶところが多いのではないだろうか? ぜひ、参考にして欲しい。

日本HP Partner News 2015年10月27日号 特集記事]
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