2017年、日本HPはパートナービジネスに、どのような事業戦略で取り組むのか。株式会社 日本HP代表取締役社長 岡隆史氏に、昨年の総括と新たな年の指針について聞いた。

●PC事業は市場を上回る成長を継続、新規ビジネスへの取組もスタート

まず2016年を振り返り、日本HPのビジネスを取り巻く市場環境と事業状況を聞かせて下さい。


株式会社 日本HP
代表取締役 社長執行役員
岡 隆史 氏

 国内PC市場は、Windows XP更新特需の反動による2014年以降の低迷期から回復しつつあります。特に、法人PC需要はすでにプラス成長に転換しています。


 この中で、日本HPのPC事業は過去6四半期にわたり、市場を大きく上回る成長を継続しています。国内シェアNo.1の企業向けデスクトップやワークステーション、シンクライアントに加え、昨年はノートPCの成長が全体を後押ししました。これまで日本HPの製品別の販売は、デスクトップPCが6割、ノートPCが4割という、市場と全く逆の比率でしたが、昨年はノートPCの販売が急増し、デスクトップPCとの割合が拮抗してきました。


 いくつか要因があります。「軽くて薄い」という日本で重視される製品要素をHPもグローバルレベルで強化しました。また、デザインも大きな差別化要素として非常に注力しています。その上で、MIL規格(米軍調達基準)適合の堅牢性、信頼性などHP製品の特長がプラスαの価値として日本のお客様に評価されています。さらに昨年後半には、1台でスマホ・PC・タブレットの3役をこなす「HP Elite x3」の投入など、新しいモバイル製品分野への取り組みも開始しました。


   

<HP EliteBook Folio>

 

<HP Elite x2>

 

<HP Elite x3>


 一方、プリンティング事業は市場全体が前年比マイナス成長となる厳しい環境でした。その中でHPは独自のページワイドテクノロジーを搭載した高速オフィスプリンターPageWide Proとモバイルプリンターを中心に中堅・中小企業や製品特性に合った業種・業務分野へのアプローチを重点的に展開しました。大判プリンターでは超高速PageWide XLや環境性能に優れたHP Latexなど、機能優位性を活かした新規顧客の開拓を図りました。これにより、従来比8倍の高速印刷が決め手となった海上保安庁様へのPageWide XL大判プリンター導入はじめ、象徴的な事例を増やすことができました。

 また、商業・産業分野向けのデジタル印刷機/輪転機は、講談社様に続き、カドカワ様での採用も決まるなど、出版・印刷からパッケージングまで用途拡大を進めることができました。



   

<HP PageWide Pro 577dw>

 

<HP PageWide XLプリンター>

   

●2016年に蒔いた「種」が今年、いよいよ芽吹く

パートナービジネスを踏まえ、昨年の日本HPの全般的な企業活動はどうでしたか。

 分社し、独立した会社組織へ変化するための1年でしたが、社内外プロセスやインフラ面での「足場固め」と同時に、HP Elite x3はじめ新規ビジネスへの「種まき」も行う事ができました。


 新分野の製品ビジネスでは、だれに、どのように販売するのかをパートナー様と一緒に考え、各社様の得意なソリューションとの連携を定義していく必要があります。そのためのコミュニケーション機会を数多くのパートナー様と持たせていただきました。


 また、昨年6月には「東京生産」を担う工場を昭島市から日野市に移転しました。生産能力の拡張だけでなく、複数に点在していた倉庫・物流機能も新工場に集約し、生産から納品までを一元化し、モノの移動を最少化することで品質向上と納期短縮、さらにSCMコストの低減を図ります。パートナー様との受発注プロセスやCRMなど、各種システムの再構築も進行中で、2017年はこれらの取組の成果がいよいよ形として見えてきます。

●「ワークスタイル変革」で、潜在需要を取り込む

2017年はこれまでにまいた種が芽吹く年ということですね。今後の市場環境をどのように見られていますか。

 PCは、法人需要を中心に完全な成長基調に転じるでしょう。その要因の1つは、Windows XP特需の反動減の影響は薄れ、Windows10ヘの本格移行の進展です。


 2つ目は、「ワークスタイル変革」をキーワードとした新たな需要です。今、日本は国を挙げて「働き方改革」へのかけ声が高まっており、そのポイントは女性・高齢者の活用による就労者増と一人当たり生産性の向上です。働く場所、時間を選ばず、移動中でも自宅でも、いつでもどこでも効率的に働ける環境をどう実現するか? という課題への対応が求められています。IT活用は、その重要な手段であり、PCやElite X3のようなデバイスがツールと考えます。働き方変革を実現するための大きな潜在需要が、今後のPC市場の成長を牽引します。

●オフィスの外で、いつでも、どこでも仕事ができる環境を提供

一方、多くの企業でPC持ち出し禁止ルールが存在するなど、セキュリティへの懸念等から「モバイルワーク」はまだ浸透していません。これに対する日本HPの取組をどのようにお考えですか。

 海外では、その広い国土、広範な商圏での事業展開から、オフィス以外の場所で、時間を選ばず仕事をすることが当たり前です。個人の生産性を高め、企業の競争力を追及する上でのIT活用、情報武装に貪欲に取り組んでいます。当然、グローバル企業であるHPはこれらの要求に応える、またトレンドを自らリードする最先端の製品・サービスを世界で提供しています。


 日本HPも、日本のお客様が他国に後れを取ることが無いよう同様の動きを加速します。我々が考える「ワークスタイル変革」は、「誰もが、いつでも、どこでも仕事ができる」必要条件を満たすデバイスとサービスの提供です。キーワードは「セキュリティ」「モビリティ」「コラボレーション」です。


 「セキュリティ」は最も重要です。現在のサイバー攻撃は組織的なビジネスとして展開されており、大きな脅威がすでに現実化しています。米国はじめ世界各国で最も高いセキュリティ水準を求めるお客様やクリティカルな用途で利用されることが多いHP製品は、これらの状況を踏まえた製品開発を行っています。


 例えば、HPはなぜ自社でBIOSを開発するのか?と聞かれることがあります。理由はBIOSレベルでハッキングされるとシステム全体の乗っ取りなど非常に深刻な状況を招くからです。メーカーとして最高レベルのセキュリティを突き詰めれば、業界唯一のBIOS自動復旧機能の搭載は不可欠なことです。


 そして「モビリティ」。どこでも仕事するために、デバイスが簡単に持ち運べることは前提です。象徴的な製品はHP Elite x3ですが、1台でスマホ、タブレット、PCの 3役をこなす特長に加え、指紋や虹彩認証など高いセキュリティ機能を備えています。


 現在、一般的なビジネスマンは一人で複数のデバイスを業務で利用していますが、その大半でOSやアプリは統一されておらず、セキュリティポリシーもそれぞれ個別に設定・管理しているのが実状です。これを1台に集約することでセキュリティの一元管理を可能にし、IT部門の工数軽減とセキュリティレベルの大幅な向上が図れます。


 「コラボレーション」は、ビジネスが複雑化し、組織間はもちろん物理的に離れた場所にいるメンバー同士がプロジェクト的に仕事を進める機会が増え、その重要性を増しています。メンバー間の円滑なコミュニケーションツールとしてのSkype利用など、PCでの音声のやりとりが必要です。すでに海外では一人あたり年間700時間以上もSkypeが業務に活用されています。


 Web会議等ではデバイスの音声品質が仕事の効率に大きな影響を与えます。このため、HPはヨーロッパの超高級オーディオメーカー「Bang & Olufsen」とのテクノロジー連携による音声処理機能の開発・搭載を進め、人間の声以外の雑音を取り除く「ノイズキャンセリング機能」や高い志向性マイク、スピーカ性能等に強いこだわりを持ち、PCでの音声コミュニケーションをクリアでストレスの無いものにしています。

●事業スケールを活かした製品の多様化への対応が「勢い」を創る

今後のパートナービジネスの成長に向けた日本HPの取組を教えて下さい。

 日本HPの製品は、ほとんど全てがパートナー様を経由して販売されています。我々のビジネスは、パートナー様にどれだけ数多くのお客様に対し、どのようにHP製品をご提案いただけるかにかかっています。パートナー様のビジネス機会を最大化し、最適なご提案を可能とするための製品ポートフォリオの拡充、そして価格と差別化機能を含めた製品競争力を高めていく事が基本です。

 また、お客様に製品の魅力を分かりやすく伝えるマーケティング活動で需要を創り出すことも我々メーカーとしての使命です。


 製品面では、グローバルで事業展開するHPには大きな優位性があります。PC、プリンティングともにその事業スケールが優劣を左右する事は一般的に言われています。ただし、その理由は以前のように「同じ製品を大量調達・生産してコストを下げ、価格で戦う」ためではなく、多様化するお客様のニーズに合わせた、様々な製品を開発・提供する為のスケールと企業体力が一層重要と考えます。お客様は、それぞれの用途で最適なフォームファクターや機能、価格帯を求め、ニーズ分化が進んでおり、これを売れ筋製品のみでカバーしようとする事は無理があります。


  ニーズの異なる170ケ国以上で、グローバルに事業を展開するHPは業界最高レベルの幅広い製品ポートフォリオを用意しています。さらに、新規市場の創造に向けた「世界初」「HPだけ」の新製品開発を加速しています。

 これが過去2年間、厳しい市況が続くPC業界で、HPが常に市場を上回る成長でシェアを伸ばし続けている要因の一つでしょう。同様に、日本国内での当社のPC事業も過去6期連続で市場以上の成長を継続し、ビジネスの「勢い」を創る事に注力しています。

●製品に加え、情報の面からもパートナーを支援する

2017年の製品戦略や注力分野を教えてください。

 個々のお客様の用途や業種に合わせた製品の「最適化」が2015年のキーワードでした。2016年に具現化し始めたこの動きを、今年さらに進化させます。


 1月発表の、会議効率を高める業界初のカンファレンスPC「Elite Slice」もその例ですが、用途提案で新たな需要を創造できると考えています。また、業界最小のミニワークステーション「HP Z2 Mini G3 Workstation」では、「これだけ小さいサイズで本格的なワークステーション性能が利用できるなら、こんな使い方もできるのでは」と言うアイデアを頂きます。すでにお客様での検証段階に入った新デバイス「Elite X3」や3Dスキャナー搭載のイマーシブコンピュータ「Sprout Pro」なども今後のビジネスの成長材料です。



 

<HP Elite Slice>

 

<HP Z2 Mini G3 Workstation>



 プリンティング事業でも今年後半には高速3Dプリンターの国内販売を予定するなど、新しいビジネス分野の創造に挑戦し続けます。2017年、HPはパートナー様に新しいビジネス機会をご提供できる製品を次々と投入していきます。



<HP 3Dプリンター>



 また、これらの製品情報や魅力を伝えていくことが、製品の品揃え同様に重要と考えています。一例ですが、大判プリンター「HP Latex」を利用されている印刷会社様から、「最近、お客様からHP Latexでの印刷を指定されるケースが増えている」と聞きました。壁紙等の内装用に使用に際し、HPのLatexインクが世界で最も高い人体・環境への安全基準を満たしている事が理由でした。





 この話は、HP Latexの製品情報が詳細まで伝わっているかどうかでビジネスの結果に大きな違いをもたらすという好例です。しかし、こうした環境基準などの細かい情報は、実はあまり知られていないことでもあります。今年は、このような製品価値をその背景を含めてお伝えするため、Webニュースでの情報発信やセミナーなど皆様とのコミュニュケーションをより密にしたいと考えています。



 日本HPは、「日本のお客様に、最も安心・信頼できる世界の先進テクノロジーを提供するベンダー」をキーワードとして、グローバルHPの最先端の技術と開発力に、日本のお客様が求める「高品質」「サポート・サービス」を加え、パートナー様とお客様へ最適な製品を提供できるよう全社一丸となって取り組んでいきます。どうぞ今年もよろしくお願い申し上げます。

日本HP Partner News 2017年1月24日号 特集記事]
本ページに記載されている情報は取材時におけるものであり、
閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承下さい。