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入社3年目の森本さんが勤める甲角物産では、新規ビジネスとして、長年培ってきたノウハウを活かした電子受発注(EDI:electronic data
interchange)システムを提供するASP部門を立ち上げようとしています。どの程度受け入れられるかわからない新サービス、どんなサーバーシステムが向いているのでしょう。
ASP部門のアイディアを出してはみたものの、具体的な提案を求められて行き詰まってしまった森本さん。別業界でシステム開発を担当している村田先輩に相談してみることにしました。
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2010年5月
西村 めぐみ
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森本さん:
お忙しいところすみません。何をどうしたらよいか、どこから手を付けたらよいかもわからなくって、先輩を頼ることにしちゃいました。
村田先輩:
今週はわりと時間があるから大丈夫だよ。ASP部門の立ち上げを提案しているんだって?森本さんのところは水産物関係の流通をやってるんだったよね?
森本さん:
元々はそうですが、今はもっと手広くやっています。加工業者さんや外食さん中心なので、一般の知名度は低いんですが、地味ながらEDIはけっこう昔からやっていますし、次世代EDIのガイドラインと言われている流通BMS(※)にも早くから取り組んでいたりします。
(※)
流通BMS(流通ビジネスメッセージ標準)とは、経済産業省の「流通サプライチェーン全体最適化事業」に端を発し、日本チェーンストア協会、日本スーパーマーケット協会をはじめとする業界団体が検討、実証実験を重ねて作成された、流通業界における新しいEDIのガイドラインになります。
「流通BMS」および「流通ビジネスメッセージ標準」は財団法人流通システム開発センターの登録商標です。
村田先輩:
なるほどね。で、そのEDIのノウハウを活かそうってわけか。
森本さん:
なんとなく行けそうかなと思って提案してみたら、上司もけっこう乗り気なんです。「いわゆるクラウド・コンピューティングってやつだね」とかなんとか。で、もう少し具体的な形にして持ってこい!と言われて。
村田先輩:
クラウドねぇ。その上司はどういうのをイメージしているんだろう。
森本さん:
AmazonやSalesfoce.com のクラウドサービスですかね。
村田先輩:
森本さん自身は、クラウドってどんなものだと思っているの?
森本さん:
えーと、世界中にあるサーバーで動いていて、いつでもそのサービスが利用できる、ってこと。そして、サーバーがどういう編成になっているかとかは、利用者側は一切気にしなくてもいいってことですね。
村田先輩:
この場合の“利用者”というのは開発者でもあるよね。
森本さん:
それと、クラウドなら必要に応じて拡張したり縮小したりが簡単にできるから、規模が読めないシステムに向いている、ってこと。今回うちがやろうとしていることも、どの程度受け入れられるかわかりませんから……。
村田先輩:
「サービスが止まらない」「規模の変化に耐えられる」、この2つを意識せずともサービスを利用し提供できる、っていうのがクラウドのポイントだね。
森本さん:
……漠然とした理解で、ほんと、雲をつかむような気分です。
村田先輩:
で、森本さんのところは、そのクラウド的なものを自前で作らなきゃいけないってことになるんじゃないかな。
ネットワーク上に存在するサーバーが提供するサービスを、それらのサーバー群を意識することなしに利用できるというコンピューティング形態を「クラウド・コンピューティング」と言います。サーバーはネットワークの“向こう側”にあるというイメージで利用し、必要なときに、必要なだけ、コンピュータ資源およびアプリケーションを確保できるのが魅力です。
図1:クラウド・コンピューティング
ただし、クラウドという言葉はとても曖昧で、例えばインターネット経由で使えるソフトウェアの提供、あるいはインフラの提供、ネットワークストレージのようなリソースだけの提供もクラウドサービスと称されます。いずれにせよ、ポイントは(1) サーバーなどのハードウェア構成を意識することなく、必要な量だけ使えること、(2) インターネットに接続されていればいつでも利用できること、であると言えるでしょう。
クラウド・コンピューティングは社内システムへの応用も進められています。企業内に構築したクラウドを「プライベート・クラウド」と呼びます。前述のとおり、クラウド・コンピューティングはインターネットの先にあるシステムに処理を任せるというシステムですが、これを自社内で実現させようというのがプライベート・クラウドです。なお、従来型のクラウドは、プライベート・クラウドに対し「パブリック・クラウド」と呼ばれることがあります。
森本さん:
といっても色々あるんですね。どうしたらいいんだろう。
村田先輩:
1つ1つ検討していこうか。まず1つめ、規模の変化だ。規模の変化に耐えられるようにするために採られている手法は主に2つ。1つは、大型サーバーなどの大きなシステムをあらかじめ用意して、その一部を使うこと。最大構成の見通しがあって、いずれはそこまで広げるぞ、と決まっている場合はこの方法が簡単だ。
森本さん:
うちは無理です。海のものとも山のものともつかないので、さすがにそこまでの投資はできません。
村田先輩:
じゃあわりと一般的なスタイル。x86サーバーのような小規模なシステムをどんどん継ぎ足していく方法だ。これなら初期投資はかなり小さく抑えられる。
森本さん:
それ聞いたことあります。システムを仮想化して、複数のサーバーをあたかも1つのリソースの塊として考えて、必要な分だけを切り出して使える、ってやつですよね。で、物理的なリソースが不足してきたらその時にはサーバーをどんどん足していけばいいって。具体的に何をどうするかは私にはさっぱりわかってないのですが、それって簡単なんですか?
村田先輩:
実はそうでもない。x86サーバーの継ぎ足しは、導入時のコストとしては確かに安いけど、管理が意外と大変なんだよ。時間差で導入するからハードウェア構成はばらばらだし、信頼性だってそう高いわけじゃない。結局はそれぞれのサーバーを面倒みなくちゃいけないわけで、やれバージョンアップだ、セキュリティパッチだ、こっちのサーバーを止めるにはどうの、って具合で、台数が増えるにしたがって手間もどんどん増えてしまう。
森本さん:
うわ、面倒くさそう。専用の部署が必要になっちゃいますね。
村田先輩:
もちろん便利なツールもあって、ある程度は自動化できるようになっているけど、それにしたって追加分のサーバーを買ってきて、ガシャンとつなげばそれで終わりってもんじゃないからね。それにサーバー間の連携をとるにはそれなりの負荷がかかるから、台数を倍にしたから性能が倍になるってものでもない。
森本さん:
初期コストもさることながら、運用コストもよーく考えないといけないんですね。
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