実習環境の充実を目指し仮想化に取り組む府中工業高等学校
 |
 |
東京都府中工業高等学校 校長 石井末勝氏 |
 |
 |
東京都府中工業高等学校 情報管理部 主任 笠原英昭氏 |
 |
東京都立府中工業高等学校(以下、府中工業高校)は2012年11月に創立50周年を迎える都立の工業高校。情報技術科1クラス、電気科2クラス、機械科1クラス、工業技術科1クラスの合計4学科・15 クラスを擁し、高い技術・技能を持つ技術者を育成している。就職希望者の就職率は100%を維持しており、実習を重視した教育手法は各界から高く評価されている。
「実習設備については、今年も最新型の大型旋盤を導入するなど非常に力を入れ、都内でも屈指の施設・設備を整備しています」(校長 石井末勝氏)
また都立高校では唯一、教員が分掌する情報管理部を設け、校内のITインフラ整備に積極的に取り組んでいる。その特色として、最小限のコストで最大限の効果を狙うということが挙げられる。
「私たちの予算はすべて都民のみなさまの税金がソース。本当に必要なものにしか予算はつきません。幸い、本校にはコンピューターに強い教員がおり、ネットワークやシステムの運用管理は彼らのアドバイスを受けながら極力自分たちで行っています」(情報管理部 主任 笠原英昭氏)
府中工業高校では教育用PC基盤として先進的な仮想デスクトップを導入している。その背景には、より充実した実習環境を生徒に提供したいという情報管理部スタッフの熱い思いがあった。
「本校はものづくり人材育成プログラムの指定校として、技術系資格の取得に力を入れています。早い生徒では中学校を卒業したばかりの段階から難関国家資格の取得を目指します。我々教員もそれに負けてはいられません。これからの工業高校、学校現場にふさわしいITシステムを自分たちで実現し、生徒に快適な実習環境を提供しようということがそもそものきっかけでした」(情報管理部 服部圭市氏)公立の教育施設ということで、予算面や設備償却のルールなどさまざまな制約がある中、限られたリソースを最大限に活用するということを前提に、服部氏らは検討を重ねた。そして老朽化したPCを有効に再利用する手法として、画面転送方式のシンクライアントと仮想化の組み合わせに着目したという。
「コンピューターの原点に立ち戻り、その機能をCPUとメモリ、そしてI/Oに分けて考えた時に、使いたいアプリケーションに合ったリソースさえ確保できれば、I/Oは古くなったクライアントPCでも実習設備として十分に活用できるのではないかという発想でした」(服部氏)
こうして、仮想化環境を検証するため平成19年度にサーバーが導入され、同時に仮想デスクトップについてもテストを開始することになった。高校としては全国で初。都の施設としても初めてのことだったという。
デスクトップ仮想化によるクラウド学習環境を実現さらに平成20年度の春には次世代PC基盤構築のためのワーキンググループが設置され、より具体的な検討がはじまる。さまざまな角度から検討した結果、正式に仮想PC方式の採用が決定し、校内クラウドの本格展開に向けての準備が進められることになった。
「当時、喫緊の課題となっていたのは、実習室に設置していたPCとアプリケーションが紐づいている状態を改善することでした」(情報管理部 岩井洋人氏)
府中工業高校には15の実習室があり、生徒は20〜30項目の実習を行っている。実習に使われるアプリケーションは、各科ごとに専門化しており、それぞれの実習室に設置されたPCにインストールされている。そのため、実習室が使われている時には、たとえPCが空いていたとしても、そこにある(=そこにしかない)アプリケーションが使えないという状況だった。
また、PCとアプリケーションの管理も各科に委ねられており、全校レベルでの一元管理ができず、アプリケーションライセンス購入の重複など、ムダなコストが発生していた。
この状況を改善するために、試験的に導入していた仮想デスクトップを、まず、PCの更新時期が迫っていた3つの実習室から展開することになった。
仮想ソフトウェアにはVMware Viewが導入され、平成21年1月に3つの実習室の仮想デスクトップ環境が稼働を開始。その後、他の実習室への展開も順次進み、平成22年4月にはすべての実習室で300台の仮想デスクトップが稼働するに至っている。
科目の垣根を越え、場所的な制約をも超えて、どの実習室からでも使いたいアプリケーションが使用でき、しかもすべてのデータは一元管理され、セキュリティも万全という環境が整えられたのだ。
「この取り組みは、都にも注目されることになりました。本庁でも仮想デスクトップ環境の検討が始まったと聞いています」(石井氏)
|