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はじめに
最近の運用管理のトピックスとして、「ITIL(アイティル)」という用語を耳にされている方は多いのではないでしょうか。昨年5月、itSMF Japan(*) が設立されたこともあり、セミナーや雑誌などへの掲載など盛んに普及活動が行われています。ITIL(Information Technology Infrastructure Library) は、英国の政府機関がITの活用を有効に行っている欧米の先進企業を調査し、その各社のノウハウをまとめたものです。
ここではITILという用語は聞いたことはあるけど、
「いまいち中身が良く分からない・・・」
「まずは基本的な概念だけでも抑えておきたい」
といった方を対象に、ITILを理解して頂くための導入編として、運用管理とは別の観点からITILのご紹介をしていきます。
(*) itSMF Japan
2003年5月、日本でのITIL普及、促進を目的として、NTTコミュニケーションズ株式会社、日本電気株式会社、株式会社日立製作所、富士通株式会社、P&G アジア・ピー・ティー・イー・リミテッド、株式会社プロシード、マイクロソフト株式会社、日本ヒューレット・パッカード株式会社の8社で発足。
「あのコーヒーショップがITILを実践している!?」 |
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勤務前のひと時、コーヒーショップでカプチーノを一杯….なんて洒落たひと時を過ごされている方も多いのではないでしょうか。
今回は、今流行りのイタリアンコーヒーショップを題材にして、ITILを紐解いてみることにします。
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IT系企業・外資系・コールセンターなどが入居するシーサイドビジネスセンター内に"バッジョコーヒー"がオープンして1月あまりが経とうとしていた。
バッジョコーヒー・シーサイド店の店長のさつきは、多くのスタッフにも支えられて何とかここまでやってきた。
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「最近、ようやくお客さんがスムーズに流れてくれるようになったわぁ。オープンしたての頃を思い出すとぞっとするわね。」
芽吹く木々の葉に春風を感じとりながら、店への道をひたひたと歩くさつきはオープン当時のことを思い出していた。
いさみ (レジ担当):
「ゆき、注文入ったよ!カフェラテのSサイズとカプチーノのMサイズ1つずつね。」
ゆき (エスプレッソマシン担当):
「待ってよ、まだ前の注文分が作り終わってないんだから・・・」
いさみ:
「次、チョコラータとSサイズのアイスのカフェラテを2つ」
ゆき:
「え〜と、これがカフェラテのSでこれがカプチーノ・・・だっけ?いさみ、これって何だっけ?」
いさみ:
「こっちがカプチーノで、これが...あれっ?オーダーどっちが先だったけかな?」
お客さんA :
「済みません、バッジョコーヒーを家のコーヒーメーカーで飲みたいので、豆を挽いていただけますか?
それとお勧めの豆とかありますか?」
いさみ:
「あっ、はいはい。誰か〜レジ代わりに入って〜・・・・」
ゆき:
「さつきさん!カップがもうないですよ!在庫はどこですか!」
「あ〜牛乳が沸騰しちゃったよ!!」
お客さんB:
「あの〜ゴミ箱がいっぱいで、これ捨てられないんですけど・・・」
お客さんA:
「コロンビア産の豆とキリマンジャロ産とでは味はどう違うんですか?」
いさみ:
「少々お待ちください。さつきさん、豆の味の違いを質問されちゃったんですけど・・・
よく分からないので、応対代わってもらえませんかー」
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オープンしてしばらくしても、慌しい店の状況が変わらないため、さつきはすがる思いで、先輩の沖田さんにシーサイド店の状況を見てもらうことにした。
沖田は、まず店内の様子を確認し、さつき、そして各スタッフから今までにあったトラブルや困っている点などを上げてもらった。
代表的なものをまとめてみると・・・
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| A : |
豆の種類や風味について質問されると困ってしまう
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| B : |
カップや牛乳が足りなくなる時があり、その度にカフェラテなどを作る作業が止まってしまう
カップのストック場所などの情報がスタッフ全員で共有されていない
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| C : |
気がつくとゴミ箱が一杯でカップなどで溢れかえっている |
| D : |
レジ担当の人が、エスプレッソマシン担当の状況を考えずにどんどん注文を受けてしまうため作業場が混乱してしまう。またお客さんを待たせる時間が長くなってしまう |
| E : |
待ちきれなくて、ドリンクを渡す前に帰ちゃった人がいた |
| F : |
作る人によりドリンクの味に差が出る |
| G : |
混雑している時に豆を挽いてくれと頼まれると、それに時間を多くとられてしまい、次のお客さんへの対応が遅れてしまう |
| H : |
通勤時間帯や、ランチ時に人手不足でお客さんへの対応が遅くなる |
沖田、さつき、レジ担当、エスプレッソマシン担当の4人は、A〜Hそれぞれについての改善方法を以下の様にまとめてみた。
| A : |
「豆の種類や風味について質問されると困ってしまう」
豆の知識のトレーニングを行う
応対マニュアルを作成し、豆販売担当者が皆同じレベルで接客できるようにする
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| B : |
「カップや牛乳が足りなくなる時があり、その度にカフェラテなどを作る作業が止まってしまう」
「カップのストック場所などの情報がスタッフ全員で共有されていない」
適度にカップや牛乳などのサプライ品を補充する
各サプライ品のストック場所や在庫数をリストに記載する
→ そのリストを見ることで、欠品になる前に発注が可能になる
→ スタッフ全員が同じ情報を共有することが出来る
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| C : |
「気がつくとゴミ箱が一杯でカップなどで溢れかえっている」
ゴミ箱の状況を定期的に確認する
お昼時など、混雑する時間帯の前にゴミ箱を空にしておく
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| D : |
「レジ担当の人が、エスプレッソマシン担当の状況を考えずにどんどん注文を受けてしまうため、作業場が混乱してしまう。またお客さんを待たせる時間が長くなってしまう」
オーダを受けてから、ドリンクを作るまでの手順を統一する
− レジ担当は、注文を受ける前に、エスプレッソ担当の状況を確認し、仕掛の数を確認する仕掛が多い場合には注文を受けるのを一時ストップ
− オーダーは最大で10個までにする (作業テーブルに置かれたカップの数で判断)
− レジ担当は注文を受けた順にカップを作業テーブルに置く
− その際レジ担当はドリンクの種類をカップに記載する。これにより、エスプレッソ担当は即座にどのドリンクをどの順番で作成すればいいか判断できる
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| E : |
「待ちきれなくて、ドリンクを渡す前に帰ちゃった人がいた」
Dにより、注文してから受け取るまでの時間が安定するので改善すると見込まれる
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| F : |
「作る人によりドリンクの味に差が出る」
豆の量、牛乳の量の定量化(カップの内側に線を入れるなど)
エスプレッソを抽出する時間、牛乳の加熱温度の統一
牛乳とエスプレッソ、氷の量の割合を一定にする
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| G : |
「混んでる時に、豆を挽いてくれと頼まれると、それに時間を多くとられてしまい、次のお客さんへの対応が遅れてしまう」
ドリンクと豆の販売を同じレジで行っているのが問題
豆の販売場所を別に設けられれば、より柔軟にお客さんの注文に対応できる
→ 店のレイアウトを変更し、豆専用の販売カウンタを設ける
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| H : |
「通勤時間帯や、ランチ時に人手不足でお客さんへの対応が遅くなる」
混雑する時間帯には、レジ担当やエスプレッソ担当を複数人配置する
お客さんの案内をするフロア担当を置く
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またスタッフが責任を持ってお客さんと接客出来るように、ポジションの新設、およびその役割を明確化した。
レジ担当 ・・・ ドリンクの注文受け付け、ドリンクメニューの案内、代金の受渡し
エスプレッソマシン担当 ・・・ ドリンクの作成、ドリンクの受渡し
バックサポート担当 ・・・ サプライ品の補充
フロア担当 ・・・ ゴミ箱の交換、お客さんの誘導、テーブルの清掃
豆販売担当 ・・・ 豆の販売、説明、豆を挽く
早速、さつきはスタッフ皆と協力して、A〜Hの改善に取り組んでいった。
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そしてオープン1ヵ月後・・・
作業手順の統一化、レイアウト変更、サプライ品や豆の知識向上などがスタッフ全員に浸透したことで、ランチタイムなどの混雑時でもお客さんへスムーズにドリンクを提供できるようになっていった。
さつきは、慌てることなく笑顔で接客を行っているスタッフやテラスで談笑する人々の姿を見ながら一人微笑んでいた。
しかし、さつきはまだこの時、この改革がお店に与えた影響について正確には気付いていなかった・・・。
(次回に続く…)
※
A〜Hによって実際には何が改善されたのでしょうか?
何を見れば改善されたことが証明できるのでしょうか?
この辺りについては、次回以降でご紹介していきたいと思います。
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■ バッジョコーヒーとITIL |
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ITILは運用管理の手本として紹介されることが多いですが、バッジョコーヒーのストーリーの中にも、ITILの中の要素が散りばめられています。
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バッジョコーヒー |
ITILの中での用語 |
ITILの中での説明 |
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サプライ品の不足、欠品
ゴミ箱が溢れる
エスプレッソマシンの故障 |
インシデント |
サービス品質を阻害、低下させるもの |
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サプライ品の補充
ゴミ箱の取り替え
エスプレッソマシンが故障した際は、メーカーに連絡 |
インシデント管理 |
システム障害やユーザからの問合せなどのインシデント(事象)に対して、的確な回答をし、迅速に提供サービスの復旧を図ること
インシデント管理担当者は自力で対処できないインシデントに限って専門の担当者に任せる |
レジ担当者
お客さんからの質問(豆の味の違い、ドリンクの種類など)に対して、販売員が対応する
(応対マニュアルの参照)
クレームやミスしたことなどをノートに記載。皆が参照できるようにして、同じミスを起こさないようにする
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サービスデスク |
ユーザからの問合せ先
シングルポイント(ユーザに対する単一の窓口)として機能し、問合せや障害に対して迅速に対応する (たらい回しの回避)
対応履歴をきちんと管理し、データを蓄積。同じようなインシデントが発生したら、担当者は蓄積したデータを参照することで迅速な対応が可能になる |
通勤時間帯やランチ時にサプライ品が不足する
→混雑する時間帯の調査。それに合わせた補充
お客さんからの質問に答えられない
→スタッフの知識不足
応対マニュアルを作成しその場で対応可能にする
※店長などが今まで応対に使っていた時間を店の経営、展開、メニューの考案などにあてられるようになる
ドリンクを作る人によって味が違う、作成時間が違う
→作成手順、レシピがスタッフ間で統一されていない |
問題管理 |
問題管理はインシデントが起きた根本原因を分析し、その後の障害発生を抑制する
インシデントを減らすことで、より問題管理に注力できるので、さらにインシデントの数が減るという好循環が生まれる |
レジのレイアウト変更
→業者への連絡
→近隣ショップへ工事内容を通知
作業手順の統一化
→レジ担当、エスプレッソ担当間で、新しい作業手順の確認。やりづらい部分は見直すなど
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変更管理 |
変更管理は、変更してもよいかどうかを判断したり、その変更による影響度や影響範囲の確認、作業の進捗確認を行う |
レジのレイアウト変更
→業者、近隣ショップとの調整
→新しいレジの搬入、設置、動作確認
作業手順の統一
→マニュアルの作成 →スタッフのトレーニング |
リリース管理 |
リリース管理では変更管理によって、承認された変更作業を計画的に実行する |
カップ、ストロー、豆(ストック場所、数量、納入者)
マニュアル(豆に関するFAQ、カフェラテレシピ・・・)
エスプレッソマシン(ベンダ名、操作マニュアル、故障時の連絡先)
→上記の情報をノートなどに記述し、誰もがいつでも参照できるようにする
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構成管理 |
サーバ、クライアントパソコン、ネットワークなどのITサービスを提供するための構成要素の情報を明確化する
構成要素同士の関連付けも行う
構成管理の情報は、問題管理や変更管理など他の運用管理業務からも参照/変更され、構成項目の変更履歴、トラブル、解決策、履歴などの情報も一元管理される |
上記表より、ITILで登場する各プロセスや用語が、"バッジョコーヒー"の中でも見て取れることがお分かりいただけると思います。
ITILの中の各プロセスは決して難しいものではなく、誰もが仕事・生活の中で実践しているものです。
そしてそれを特にシステム運用管理に特化して、体系化(各プロセスの役割定義、プロセス毎の関連性を定義)したものがITILになります。
■ まとめ |
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どうですか、バッジョコーヒーの例で見てみますと、目新しいことは多くはなかったのではないでしょうか。
ITILは運用管理の手本として位置づけられておりますが、別の視点から見て頂くことで、より身近に感じて頂けたかと思います。
今回取り上げた、
- インシデント管理
- サービスデスク
- 問題管理
- 変更管理
- リリース管理
- 構成管理
はITILの中では「サービスサポート」(*)という分類に位置づけられています。
(*)ITILでは運管理業務を大きく2つに分けています。
- 「サービスサポート」・・・
ユーザが所望するITサービスを適切に利用できるようにすること
バッジョコーヒーで例えると、
"お客さんが飲みたいドリンクを、一定の味で、お待たせすることなく提供出来るようにすること"になりますね。
- 「サービスデリバリ」・・・
ビジネスで必要とするITサービスを高い投資効果で提供すること
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次回 「誰にでもわかるITIL vol.2」では、
- 「サービスデリバリ」(*)の紹介
- 運用管理とITIL
- HP OpenView ServiceDeskとITIL
などを取り上げていきたいと思います。
では、読み終えたところでブレイクでもましょうか、カプチーノで♪
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