半年に渡り、ミッションクリティカルシステムにおけるLinux⁄x86サーバーとHP-UX⁄Integrityサーバーをさまざまな角度から比較・検証してきた本連載も、今回をもって最終回を迎える。信頼性、堅牢性、安定性、さらにはサポート体制などにより、HP-UX⁄Integrityサーバーの優位性を見てきたが、実際に導入するには「コスト」という壁がある。オープンソースのLinux、コモディティ化されたx86サーバーの導入コストの安さは、語るべくもない。ところが、米国調査会社が発表したレポートによると、トータルコストを比較した場合、むしろ“Linux⁄x86サーバーはコスト高”だという。今回は、その衝撃的なレポートを読み解いてみたい。
最終回 “Linux⁄x86サーバーはコスト高”という衝撃の調査結果
2011年2月
大神企画 富樫 純一
“エンタープライズLinux”という言葉がメディアに取り上げられはじめて、今年で丸10年が経過した。この間、Linuxはバージョンアップを重ねるごとに着実に進化を遂げ、企業システムを支える重要なプラットフォームの一角を占めるまでに成長した。Linuxの主要な稼働基盤となるx86サーバーも64ビット化・マルチコア化が進むとともに、仮想化を実現するハイパーバイザーをハードウェアベースでサポートしたり、RAS(Reliability
- Availability - Serviceability)機能が実装されたりといったように、企業のエンタープライズシステムに十分対応できるほどの実力を身に着けている。
ミッションクリティカルシステムにおける採用例も増え、現在は金融業界の勘定系基幹システム、あるいは社会インフラを支える制御システムといった分野においても、Linux⁄x86サーバーが導入されるケースが出始めている。メディアがLinux⁄x86サーバーを礼賛するのも無理はない。
高い可用性、信頼性、拡張性、性能が要求される分野でも十分に使用に耐え得るLinux⁄x86サーバーの最大の特徴・メリットは、コストパフォーマンスが極めて優位である点というのが常識だ。事実、オープンソースソフトウェアのLinuxは、基本的にOSを無償で使うことができる。x86サーバーも、コモディティ化されたパーツが採用されたことで低価格化が猛烈に進んだ。OSもハードウェアも、導入費用は極めて低廉。これは、否定しようがない事実である。
ところが2010年8月、米国の調査会社・Alinean社から驚くべき結果のレポートが発表された。安価なはずのLinux⁄x86サーバーではなく、HP-UX⁄Integrityサーバーを選択したほうがTCOの削減とROIの向上に貢献するというのだ。Alinean社によると、3年間のTCOを比較してみると、Linux⁄x86サーバーよりもHP-UX⁄Integrityサーバーのほうが約20%も有利であり、結論として「HPを選択すると、IT運用と管理面の生産性の向上、変更費用の削減、可用性の向上により費用が削減される。適応力を向上させることによって、さらなるビジネス効果が得られる」という分析している。2010年8月かつUSの価格とはいえ、TCOの削減という指標としては日本においても十分参考になるだろう。
今回は、この第三者機関が発表したレポートの内容について、サマリーを紹介する。
単純なコスト比較だけでは見えてこないTCO削減効果を知る
1. 導入後の運用費用も考慮し、ライフサイクル全体でコストを考えよう!
2. HP-UXの管理機能がITの生産性向上に役立つことを認識しよう!
3. コスト削減だけにとどまらないビジネス効果があることも理解しよう!
OSのことならお任せ! 富樫先生
Alinean社のレポートには、冒頭に調査概要が事細かく語られている。Linux⁄x86サーバーとHP-UX⁄Integrityサーバーのコスト効果は、単純なITコスト(ハードウェア購入費用、ソフトウェアライセンス費用、保守契約費用)によって比較が行われているのではなく、企業にとってどれだけの経済効果があるのか、TCO
(Total Cost of Ownership=総保有コスト)で計算されたことが力説されている。
Alinean社のTCO分析手法は、米国の30業種以上・2万社以上のIT関連支出とTCOベンチマークを調査して基本となるデータと評価基準をまとめ、これをベースに開発された標準モデルを使用するというものだ。いわゆる“手間”となる人件費も、米国の特定地域における賃金負担率を米ドルに換算して計算されている。ハードウェアやソフトウェアの費用は、Alinean社がHPと競合他社のWebサイトに公開されている表示価格を収集したものだという。
TCOの比較に用いられた項目は多岐にわたる。サーバーやストレージ、ネットワーク機器などのハードウェア、OSやミドルウェア、アプリケーションなどのソフトウェアはもちろん、ITの運用管理業務にかかる人件費、ITの調達や資産管理、トレーニングなどにかかる人件費、データセンターの設置面積や消費電力、空調にかかる費用などに加え、可用性や事業利益に関しても金額換算が行われている。
実際の比較で用いられたのは、72コアの「SUN Fire 15K Ultra SPARC III」が2台、24コアの「SUN Fire
6800 Ultra SPARC III」 が14台で本稼働、テスト、開発の環境で使用しているシステムを、Linux⁄x86サーバーおよびHP-UX⁄Integrityサーバーにマイグレーションするというケースシナリオ。移行先となるハードウェアは、以下のとおりだ。
まず、Linux⁄x86サーバーは、4コアの1Uラックマウントサーバー10台、16コアの4Uラックマウントサーバー4台。1UサーバーにはXeon 3.06GHz、4UサーバーにはXeon 2.26GHzが搭載されており、コア総数は104、OSは「Red Hat Enterprise Linux 5」が稼働する。いずれもHP以外の他社製品だ。一方のHP-UX⁄Integrityサーバーは、16コアの「HP Integrity BL870c i2」が2台、8コアの「HP Integrity BL860c i2」が5台、16コアの「HP Integrity Superdome 2」が2台。プロセッサーはいずれもItanium 9340 1.6GHzでコア総数は104、OSは「HP-UX 11i v3」が稼働する。
ハードウェア費用を単純に比較すると、x86サーバーが197,535ドル、Integrityサーバーが490,412ドルと、HP-UX⁄Integrityサーバーが2倍以上も高額だ。HP-UX⁄Integrityサーバーの場合、支払猶予となるiCAPの費用(3年間分)があるものの、それでも292,877ドルも差がある。
図1: ハードウェア費用の比較
ところが、ソフトウェアの費用は、HP-UX⁄Integrityサーバーのほうが圧倒的に有利だという。これは、HP-UX 11iが備えるコンソリデーション、パーティショニング、ワークロード管理機能により、必要となるプロセッサライセンスが少なくて済むためというのが、Alinean社の見方である。ケースシナリオでは、Oracle
Database Enterprise Editionにかかるライセンス総費用が705,000ドルも違っている。 OSにかかる費用は、Linuxが無償(ゼロ)、HP-UXが279,240ドルとHP-UXが圧倒的に高額だが、HP-UXにはシステム管理、ディザスタリカバリ、仮想化ソフトウェアがすべて含まれており、追加ライセンスは不要。これらをすべて計算すると、HP-UX⁄Integrityサーバーが3年間で556,515ドル、約30%も低コストになるそうだ。
図2: ソフトウェア費用の比較
同様の傾向は、サポートとメンテナンスにかかる費用にも表れている。とりわけ、ソフトウェアサポート費用に大きな差が生じているが、ケースシナリオのワークロードを処理するには、Linux⁄x86サーバーはHP-UX⁄Integrityサーバーよりも多くのプロセッサコアとライセンスが必要になるというのが理由だ。また、Linuxはオープンソースであるものの、年間のサポートとメンテナンス費用は、HP-UX
11iよりもコスト高なのだという。
本ページの内容は執筆時の情報に基づいており、異なる場合があります。
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