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企業が自らシステムを「保有」することでさまざまなメリットを獲得できるが、その一方で「保有」に伴うコストを負担しなくてはならない。サーバーをはじめとするITリソースを導入する際の初期コスト、システムを安定的に安全に稼働させるための運用管理コスト。年々増加するこうした保有コストをいかに削減するかはあらゆる企業の重要な関心事だ。
その解決策の一つがレンタルサーバーである。サーバーを保有せず、必要な時に「利用」することで初期コストや運用管理コストの削減が可能になる。ライドはこのレンタルサーバー・ビジネス業界で着実な成長を遂げてきた。その結果、今日では大手企業の傘下に属さない「独立系レンタルサーバー会社」の中でトップ集団を走るまでになっている。
中小企業のための「スピーバー」を展開
同社が「スピーバー(SpeeVer)」というブランド名で提供するレンタルサーバー・サービスは2003年からスタート。主なターゲットは中小企業だ。中小企業の場合、高い専門知識を備えるシステム担当者を専任で抱えることが難しいケースが多い。こうした中小企業の悩みをワンストップで解決できるよう、サービスの付加価値を高めることに継続して取り組んできた。
「ライドでは、サービス提供価格、使えるようになるまでのスピードといった付加価値に加え、導入時や運用時のサポートに特に力を入れています。システム担当を兼任する社員の方の負担をできるだけ軽くするということです」と、同社代表取締役の中野浩也氏は解説する。
たとえば、「スピーバー」のオプションサービスとして、「乗り換えコンシェルジュ」がある。レンタルサーバーの乗り換え時には、ウェブページのデータ移行やメールアカウントの設定など煩雑な作業が発生する。こうした顧客に対し、乗り換え作業をすべて代行する。「お客様からの評判は非常にいいですね」と中野氏。中小企業のために、という同社の姿勢がよく現れている。
IT分野でこのところ話題になっている「クラウド」。もちろんレンタルサーバー業界でも注目のキーワードだが、「クラウドという新しい概念が登場してきたことで、レンタルサーバーに対するお客様のニーズが従来と大きく変わりつつあります」と中野氏は変化を強く意識している。
ウェブとメールだけから、多様なサービスの利用へ
これまでレンタルサーバーといえば、独自ドメインが取得・運用できて、ウェブページの公開とメールの利用ができれば十分、という顧客がほとんどだった。しかし、クラウドに対する顧客の理解が深まるにつれて、ウェブやメールだけでなく、より広い用途で使いたいという要望が寄せられるようになってきた。具体的には、ウェブページのデータを置いているストレージをファイルサーバーとして使えないのか、借りているサーバーにいろいろなアプリケーションを載せてSaaS(Software as a Service)として活用したい、といったような要望である。
もちろんライドでは、中小企業にとっての付加価値を高めるというテーマの下、クラウドが注目される以前からさまざまな新しいサービスを開発し、顧客に提案し続けてきていた。だから「クラウドの中身が明確になるにつれて、ある面でライドがこれまで提供してきたようなサービスではないか、という印象を持つようになりました。いわば、我々のサービスがすでにクラウドだった、というのが正直なところです」と中野氏。
多様なニーズに応えるためインフラを構造から見直す
ニーズの大きな変化を実感したことで、提供サービスのさらなる多様化や各サービスで用意する機能の充実、サービス利用料金の低価格化などを一気に進めることを同社は決断。しかし目標を達成するには、これまで使ってきた既存インフラを大幅に見直すことが必要だと同社では認識していた。このため、システムのリース切れというタイミングを見越し、本格的なクラウド時代をにらんだインフラの大胆な改革プロジェクトを動かすことにした。まず改革すべき最大のポイントは、インフラの構造そのものだった。既存インフラでは、1台の物理サーバー上に仮想化ソフト「Parallels」で複数の仮想サーバーを構築。顧客ごとに仮想サーバーを割り当て、その上でウェブやメールといったすべてのサービスを提供するという構造になっていた。いわば、「サーバー単位」でサービスを提供していたのである。このため新しいサービスを追加したい、複数のサービスを自在に組み合わせて提供したいといった時に、柔軟性がなかった。これは新たな付加価値を生み出すうえで大きな制約となっていた。
「この課題を解消するためにとった戦略が、インフラの構造をサーバー単位からサービス単位へと転換することでした」と中野氏は語る。つまり、複数の顧客のウェブサービス、メールサービスを集約してサービスごとの共有サーバーを用意するというものだ。こうした構造であれば、新たなサービスの追加も容易になるうえ複数のサービスを自在に組み合わせて顧客の多様なニーズに応えることも簡単にできるようになる。
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ライド株式会社
NWグループ リーダー
中山 謙二 氏 |
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改革プロジェクトをリードした一人である同社NWグループの中山謙二リーダーは、日々のシステム運用で感じていた課題や不満を解消する絶好の機会になると、このプロジェクトをとらえていた。既存インフラは運用面でも、サーバー単位のインフラ構造に起因するいくつかの悩みを抱えていたのである。
高い可用性で止まらないサービス提供を実現する
中山氏が最も気になっていた第1のポイントは、システムの可用性だった。サーバー単位の構造を持つ既存システムでは、物理サーバーに収容している仮想サーバーのうち一つでもトラブルに見舞われると、物理サーバー全体のダウンにつながる。これは、同じ物理サーバーに収容されているすべてのお客様の、すべてのサービスが止まってしまうことを意味する。サーバーを再起動するにも10分程度の時間がかかってしまうため、サーバーダウンの影響は甚大だ。「レンタルサーバーのビジネスで一番大事なことは、24時間365日サービスを安定して提供すること、止めないこと。その意味で、新インフラで採用するサーバーやストレージには高い可用性が必要だと考えていました」(中山氏)。
自在に拡張してもシステム停止は不要に
第2に改善したかったのは、拡張性。顧客数やサービス数、扱うデータ量などはビジネスの成長とともに、今後も確実に増えていく。これまでは物理サーバー数を増やすことで対応してきたが、拡張時にはシステム停止が必要だった。「CPUにしてもストレージにしても、いかに効率良く、システムを止めずに拡張できるか。そして拡張してもパフォーマンスが落ちないこと」(中山氏)。こうした点をプロジェクトチームでは重視した。
リソース利用率の向上でコストダウンにつなげる
そして第3のポイントはITリソース利用率の向上。これはコストダウンにもつながるテーマである。「コストダウンが図れれば、提供サービスの低価格化にもつなげることが可能になります」と中山氏は解説する。リソース利用率の向上で特に意識したのはストレージだ。既存インフラではストレージとしてサーバーの内蔵ディスクを利用していたため、サーバーによってディスクの使用量にバラつきが生じたり、あまり使われない無駄が生まれたりしていた。そこで新インフラではサーバー共有の外部ストレージを用意。ここにデータを集約することでリソース利用率の向上を図ることにした。
こうした方針が決まったところで、機種の選定から新インフラ構築までを一括して任せられるSIerの選定に着手。新インフラではLinux系のCentOSをベースに、仮想化ソフトParallels Operations Automationを組み合わせることにしていた。そこでライドは、Parallelsで豊富なソリューションを展開していることを評価し、日本ビジネスコンピューター(JBCC)へ依頼することを決めた。
元々JBCCは、メインフレームを使った大規模な基幹システムのソリューションやインテグレーションで強みを発揮してきたSIer。しかし、近年オープン系システムの分野にもビジネスの領域を積極的に拡大しており、HPとはビジネスパートナーの関係にある。
依頼にあたり、ライドがJBCCに提示したのは、サーバー単位からサービス単位へとインフラの構造を大幅に変更したいということ、ハードウェアの選定に関しては可用性と拡張性を重視すること、ITリソースの利用率向上のため外部ストレージを採用すること、という三つの条件だった。これを受け、JBCCではハードウェアの具体的な選定作業に入った。
iSCSIの選択としてLeftHandは抜きん出た存在
JBCCサイドでプロジェクトのまとめ役を担ったオープンシステム営業開発部グループリーダーの佐古裕之氏はこう語る。「三つ目の条件である外部ストレージの採用という点では二つの選択肢がありました。FC(ファイバーチャネル)によるSANとiSCSIによるSANです。しかし、費用対効果の面でも、拡張性や柔軟性の面でもiSCSIは断然有利です。そしてiSCSIのストレージ製品となると、HP LeftHandと他社の1製品、この2製品が市場では完全に抜きん出ていました」。
さらに可用性の高さという点を考え合わせると、「外部ストレージの候補はHP LeftHandしか残らなかった」(佐古氏)という。HP LeftHandはその大きな製品特長として「ネットワークRAID」機能を業界で唯一搭載している。これはストレージ筐体をまたいだRAIDの構築を可能にする技術で、万が一筐体障害が起きた場合でさえデータは確実に保護される。「この極めて高い可用性を実現するネットワークRAID、そしてストレージの領域割り当てをあらかじめ行う必要がなくスモールスタートを可能にするシンプロビジョニング機能を、提案ではアピールしました」(佐古氏)
無停止での拡張、ストレージクラスタリングも評価
JBCCからの説明を受けたライドでもHP LeftHandの先進性を高く評価した。「ネットワークRAIDは非常に魅力的でした。また、システムを止めずにディスク追加ができる拡張性、パフォーマンスを落とすことなくストレージをスケールアウトできるストレージクラスタリング機能などの面でも、我々の要望と実にマッチしていました」と中山氏は振り返る。「初めて導入する製品ではありましたが、得られるメリットの大きさを考えるとHP LeftHandの採用に迷いはありませんでした」(中山氏)。
一方、共有サーバーにはパフォーマンスと可用性の高さに加え、HP LeftHandとの親和性の良さが見込まれ、HP ProLiant DL360 G6の採用が決まった。
そして、HP LeftHandおよびHP ProLiant DL360 G6の納入を合図に、プロジェクトは構築フェーズの佳境に入る。搬入されたハードウェハはJBCCの手によりOSインストール、設定作業が行われ、構築に向けた準備は着々と進んだ。サーバーにしてもストレージにしても、構築は非常にしやすかったようだ。「特にHP LeftHandは、初期設定して、ネットワークの設定をして、サーバーから接続する設定などをするだけ。細かい設計やチューニングをする必要がなく、非常に構築は楽でした。また、細かい技術的な疑問点をHPに問い合わせると、エンジニアからレスポンス良く情報提供が返ってきたことにも感謝しています」(佐古氏)。
顧客の利用プロセスの自動化を大幅に導入
その後、仮想化環境の構築を経て、新インフラは基本的な構築作業が完了。そして、この上で提供するサービスの詳細な検討、そのために必要となる個別アプリケーションの開発などがライドの手によって進んでいる。「新しいサービスでは、ウェブからお客様が使用目的に応じたメニューを選択していくと、それに応じたアプリケーションが自動インストールされ、独自ドメインの取得や決済も自動的に完了、15分ほどで必要なサービスが利用できるようになる仕組みを考えています」と、新インフラ上で提供する新しいサービスのイメージを中山氏はアピールする。
新サービスのリリースに向けた作業が急ピッチで進む一方で、新インフラの具体的な導入効果も見えてきた。そうした例の一つが、サーバー集約の進展だ。「従来と比べ、サーバー数を約3分の1にまで減らせるメドがたってきました。集約率が上がったことで、データセンターの利用料金を削減することが可能になります。お客様への提供料金を下げる余地が生まれるという意味で、うれしい成果です」(中山氏)
「新インフラに対する期待値は、システム面からもビジネス面からも非常に高いですよ」と中野氏も中山氏も笑みをこぼす。システム面で中山氏が大きな期待を寄せているのは、HP ProLiantサーバーに付属する電力管理ツールだ。データセンターではラックごとに電力容量を管理しているが、ラックに割り当てられた電力容量を超えないように、余裕を見てサーバーの台数を搭載するため、集約率が上げられないという悩みがあった。「電力管理ツールでは消費電力のシミュレーションができるため、電力容量ギリギリまで集約率を高められるのでは」と中山氏は期待する。さらに電力容量の最大値を設定しておけば、自動的にその範囲内に収まるようサーバーの稼動をコントロールしてくれる。「人手をかけずにこうした管理ができるのは大きなメリットになると考えています」(中山氏)。
「リソース提供」ビジネスから「サービス提供」へ
一方、ビジネス面での期待は広範囲にわたる。サービスの申し込みから利用開始までをウェブ上で自動的に進めることが可能になれば、顧客は使いたい時に24時間365日いつもで、すぐに利用をスタートできることになる。サービス単位のインフラ構造により、サービスの自由な組み合わせ、多様なサービスパッケージの提供なども簡単にできるようになるだろう。さらにクラウド的な利用法であるSaaSサービスとして、ライドが独自に開発したアプリケーションサービスの提供も可能だ。「レンタルサーバー・ビジネスは、これまでの『リソースの提供』から『サービスの提供』という考え方にビジネスモデルが大きく変わろうとしています。中小企業のお客様に対し、いかに斬新で付加価値の高い多様なサービスを提供できるかが、これまで以上に問われることになるでしょう。ライドはその期待に新インフラで応えていきます」と中野氏は決意を新たにしている。
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