市内43拠点1,200名の教職員に校務用クライアント環境を提供
静岡県東部に位置する富士市。『学び合い 学び続ける 「ふじの人」づくり』を目指し、教育に力を入れていることでも知られている。その富士市教育委員会では小学校27校、中学校16校の教職員に向け、校務用クライアントPC環境を整備することがここ数年の懸案となっていた。1,200名の教職員1人につきPC1台を用意することで校務の効率化を図り、より質の高い教育を提供していこうという狙いである。
だが、校務用クライアントPCは、児童生徒のテスト結果の集計や通信簿の作成をはじめ、個人情報に属するデータを取り扱う。高度なセキュリティ対策が求められたため、その選定に苦慮する状態が続いていた。
富士市教育委員会では2010年11月、富士市役所総務部の情報政策課に支援を要請した。ここは企業でいう情報システム部門に相当する部署で、市のIT環境全般の整備を担当している。システム開発担当主幹の深澤安伸氏は次のように語る。
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富士市役所 総務部 情報政策課 システム開発担当 主幹 深澤 安伸 氏 |
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「当初、教育委員会ではシステム構築にコストをかけないために、量販店などでノートPCを購入し配布することを検討していました。ただし、それではセキュリティ上の課題がクリアできないだけでなく、運用管理にも膨大な手間とコストを要します。私たちはこれまでの経験からシンクライアントシステムの採用を提案しました」
富士市役所では、およそ10年にわたり、アプリケーション仮想化ソフトウェア「Citrix XenApp」を採用したシンクライアントシステムを活用してきた。富士市役所自身のプロジェクトも、1,200名におよぶ市役所職員に一人一台のクライアントPCを配布するところがスタート地点だったという。しかも担当者が4名という状況下で、いかに運用管理工数を削減するかというテーマがあった。今回のプロジェクトと共通する課題が多かったわけだ。
ただし、市役所職員と教職員のクライアント環境では大きく異なる要件があった。
「市役所職員の場合はいわゆるOAと呼ばれ、ほぼ標準化されたアプリケーションを利用するのに対し、教職員の場合は校務のために文科省などから多様なアプリケーションが配布され、それは我々には未知のものも多い。シンクライアントシステムにおいて、それらすべての動作検証を行う工数は、大きな課題になると考えました」(深澤氏)
パフォーマンスボトルネックをつくらないストレージとネットワークスイッチの選定
ターミナルサービスとして動作するシンクライアントシステムでは、各所から配付されるアプリケーションの動作検証をその都度、実施しなければならない。そこで深澤氏らは、事実上アプリケーションの動作検証が不要な「Citrix XenDesktop」によるデスクトップ仮想化システムの導入を決断し、それを前提としたプラットフォームの入札を実施した。その結果、採用されたのは、パナソニック電工インフォメーションシステムズ株式会社(以下、パナソニック電工IS)の提案した「HP VDIソリューション」である。
HPシンクライアントシステムのオフィシャルパートナーでもあるパナソニック電工ISの田中暢浩氏は、提案したシステムのポイントを次のように説明する。
「弊社はこれまでに数多くの文教市場に、ネットブート方式のシンクライアントシステムを導入してきた実績があります。その経験をもとに、サーバー、ストレージ、ネットワークまで、パフォーマンスボトルネックになる可能性を徹底的に解消し、さらに管理工数を最小化できる構成を工夫しました」
パナソニック電工ISが提案したシステムは、iSCSI-SANクラスターストレージ「HP StorageWorks
P4000 G2 SAN」、ブレード型サーバー「HP ProLiant BL460c G7」、ネットワークスイッチ「HP A5820 Switch Series」、シンクライアント端末にモバイル型の「HP 4320t Mobile Thin Client」を中心に構成されていた。
「HP StorageWorks P4000 G2 SAN」は、スケールアウト型の最新鋭ストレージだ。ストレージクラスタリングと呼ばれるアーキテクチャを採用し「仮想ストレージプール」を実現する。物理設計に煩わされることなく仮想サーバーの要求に応じた柔軟な運用が可能なため、ストレージシステムの管理工数を大幅に削減できる。
また「HP A5820 Switch Series」は複数のスイッチを仮想化し、1台の仮想スイッチとして運用できるHP IRFテクノロジーを採用。HP BladeSystemのI/O仮想化ソリューション「HPバーチャルコネクト」と組み合わせることで、ネットワーク構成を劇的にシンプル化できる。
基幹ネットワークおよびSANは10GbEにより高速に結ばれ、ボトルネック発生の可能性は徹底的に排除されている。たとえば朝の始業前、全43拠点・1,200名の教職員が一斉にログオンするという状況にも耐えうるものだ。
実際に教職員が使う「HP 4320t Mobile Thin Client」は、ノート型のシンクライアントだ。端末に
データを持たないシンクライアントの良さと、省スペース、可搬性というノート型の良さを兼ね備え、このシステムがセキュリティーと柔軟な働き方を高度なバランスで実現することに大きく寄与している。
「ご提案いただいたハードウエア基盤は我々の要求を満たしていたのはもちろん、コストパフォーマンスにも非常に優れていました」と深澤氏は採用の理由を振り返る。
今回のシステムは1,000クライアントの最適構成を示した「HP VDIリファレンスモデル」をベースにしたと田中氏は話す。
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パナソニック電工 インフォメーション システムズ株式会社 サービスビジネス本部 IDCサービス事業部 シンクライアントサービス グループ エキスパート 田中 暢浩 氏 |
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「国内では前例のないスケールのシステム構築だっただけに、HPのモデルは信頼に足る資料になりました。さらに、そこに本システムのために特別な工夫も凝らしています」(田中氏)
“特別な工夫”とは、限られたサーバー資源でレスポンスの最大化を図っている点にある。その一例が、ファイルサーバーおよびプロファイルサーバーに実装された「HP PCIe IOアクセラレータ」だ。高速な読み出し性能を発揮する320GB SSD(ソリッドステートドライブ)を採用し、システム全体のスループット向上に大きな威力を発揮する。
「可能な限り専有スペースを小さくしてハードウェアを3ラック以内に収容する、という要件に応えるためにも、HP PCIe IOアクセラレータは有効でした」と田中氏は言う。
深澤氏も「実際のところ、富士市役所内のサーバールームには物理的な制約がありました。パフォーマンスを確保しつつ限られたスペースに収容する構成には、パナソニック電工ISさんの経験とノウハウが活かされたと考えています」と評価する。
サーバーシステムはHP BladeSystem c7000エンクロージャー3台に計48サーバーを収容するなど、高密度な集積が可能なHPのハードウェア群も省スペース化に貢献している。
さらに、大規模な仮想デスクトップ環境を支えるシステム基盤を、パナソニック電工ISはわずか1か月半で構築している。
「パナソニック電工ISさんがCitrixの仮想化システムに精通していたこと、HP VDIリファレンスモデルをベースにすることで、最適なサイジングを短期間で行えたことが大きかったと思います」(深澤氏)
HPとCitrix社のワールドワイドでの協力関係は、両社のソリューションの親和性を高めるとともに、「HP VDIリファレンスモデル」に代表されるベストプラクティスを数多く生み出している。
市役所職員向けの次期システムにも仮想デスクトップ環境の採用を視野に
システムは2011年8月末から段階的にサービスを開始し、ユーザーへの基本的な導入研修も終えているが、実際にはまだフル稼働までに至っていないという。実は行政からの節電要請に対応するため、全1,200クライアントでの100%稼働が認められていなかったのだ(2011年9月末時点)。
そのためシステムを評価するのは時期尚早と断ったうえで、深澤氏は次のように話す。
「今までなかったPCというツールがすべての教職員に配布されました。喜んで使う人もあれば、最初は難色を示す人もいるはずです。しかし、すべてのユーザーがたとえば5年後に、PCがなくては仕事にならない、と評価してくれるようなものでないと、私たち情報政策課が関与した意味はないと考えていました。仮想デスクトップ環境によってその目標は達成できたと自負しています」
本システムによって、個人情報も安心して扱えるセキュアなクライアント環境を、小中学校のすべての教職員に行き渡らせることができた。これまで学校ごとに作成していた資料や教材を、すべての小中学校で共有できるようにもなった。人事異動の際もIDとパスワードでログインすれば、メールやファイル、校務アプリケーションなどが異動先でそのまま使えるなど、さまざまなメリットをもたらしている。これらが校務の効率化を推進し、教職員に児童生徒と触れ合う時間を増やすことになって、はじめてシステム導入は成功といえると深澤氏は考えているのだ。
さらに深澤氏は、これまで10年にわたってCitrix XenAppを使い続けてきた富士市役所の次世代システムにも、「仮想デスクトップ環境」の導入を視野に入れているという。
「これまでのところシステムに不満はありません。仮想化のテクノロジーを支えるHPプラットフォームの先進性、コストパフォーマンスの高さを実感しています。1,200クライアントの教育の現場を、しっかり支え続けてくれることを期待します」(深澤氏)
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