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脅威の静音性を実現した水冷テクノロジー

     
目次     はじめに   ワークステーションの電力と稼動音   HP の稼動音低下技術
    まとめ      

  はじめに

過去 10年間に、パーソナル ワークステーションの処理能力が大きく向上しました。メモリ サイズの増大、グラフィックス機能とハードディスクドライブ容量の向上、さらにプロセッサ パフォーマンスの飛躍的な高速化により、格段に強力なデスクトップ システムやデスクサイド システムが作製されるようになりました。 しかし、性能の向上とともに、一方では好ましくない副作用がいくつか発生しています。最も深刻な問題に、電源要件の増大と、それに伴う発熱の増加があります。内部の熱をキャビネット外部に発散させるため、冷却システム (主に空冷ファン) が増設されてきましたが、これらの空冷ファンにより、コンピュータ システムから発生する稼動音も相当に大きくなりました※1。

今日のパーソナル ワークステーションでは、プロセッサがシステムの発熱の最大の要因となります※2。初期のデスクトップ システムは、数千個のトランジスタを持つシングル プロセッサ ベースであり、10W 未満の熱しか発生しませんでした (図 1)。このようなシステムでは、電子機械的な冷却は必要ありませんでした。周囲の空気と自然に対流することで、コンポーネントを十分に稼動範囲内に維持できました。

現在のプロセッサは数億個のトランジスタで構成されており、100W 以上の熱が発生するものもあります。この状況は、ハイエンド システムが小型化し、複数プロセッサ、複数ハードドライブ、I/O カードとグラフィックス カード、および数ギガバイトのメモリを持つようになったことで、さらに熱の発生は増加しました。その結果、冷却のために大量の空気が移動する環境が必要となりましたが、空気が移動すると空冷ファンによる騒音が発生します。

図 1: 時間の経過に伴う、市販のマイクロプロセッサの電力要件の増大※3
時間の経過に伴う、市販のマイクロプロセッサの電力要件の増大


HP は、パーソナル ワークステーションへの最新テクノロジの採用で業界をリードする企業であり、稼動音の低下も例外ではありません。ハイエンドの xw9400 Workstation に革新的なテクノロジを採用して騒音レベルを低下させ、高レベルのパフォーマンスを確実に維持するとともに、騒音の発生を容認可能な範囲にとどめています (または低下させています)。本書では、このテクノロジを検証し、より効率的な冷却システムの利点について説明します。

  ワークステーションの電力と稼動音

稼動音とは?

稼動音は、振動する音源が発する圧力波です。人間の耳は圧力波を検出し、電気信号に変換します。雑音(ノイズ)は、調音 (トーン) (正弦波) や音(サウンド) (複数の調音の組み合わせ) とは異なり、不規則な振動と解釈されています。

音の大きさを測定する方法には、音響出力音圧の 2 つ方法があります。音響出力は、一定期間に音源から放出される音響エネルギーの総量であり、一般にワット (W) で表されます。音圧は、空間内の特定の点で音波によって生成される圧力であり、一般にマイクロバールまたはパスカル (Pa) で表されます。どちらの尺度も有用ですが、一般に (絶対レベルではなく) 合意に基く基準面に対する相対的な表示が使用されます。これらの相対的な音響レベルを表す測定単位として、ベル (B) またはデシベル (dB) が使用されます。ベルとデシベルは、どちらも対数値であり、10 デシベル増えると、知覚される音量はほぼ倍になります。音響出力と音圧は、どちらも dB (図2※4) で表されます。

人間の耳は音の周波数によって感度が異なるため、音響レベルを測定する信頼できる道具ではありません。そのため、知覚した騒音の大きさだけが問題になるわけではありません。周波数、波形の種類、音響ストリームの摂動などが、人間の耳への騒音の違いとして大きな影響を及ぼします。

パーソナル ワークステーションの稼動音

図 2: 一般に使用される音圧レベルの指標※3パーソナル ワークステーションの稼動音には、下記を含めて複数の音源があります (「大きさ」の順)。

・ ファン (空冷ファン、冷却ファン等)
・ ハードディスク ドライブ (HDD)
・ オプティカル ディスク ドライブ
・ その他の雑音 (たとえば、変圧器、キーボードなど)

ファンは、ワークステーションの稼動音に関して、格段に大きな音源となります※5 。ワークステーションには、筐体内部を冷却するファン、グラフィックス カード上のファン、さらによく見られるプロセッサ自身のファンなど、一般に複数のファンがあります。冷却効率を改善するために、プロセッサには一般にヒートシンクが付いています。ヒートシンクにより、冷却用の空気が流れる表面領域が拡大するため、コンポーネントの熱を拡散することができます (図 3)。その性質から、ヒートシンクでは、空気の流れがその上または中を強制的に通過する際に、大きな乱気流が生まれます。この乱気流から、かなり大きな騒音が発生します。 ファンによるワークステーション キャビネット内の強制的な空気の流れが他のコンポーネントに当たる際、またキャビネットから外に出る際に発生する乱気流により、さらに大きな騒音が発生します。
図 3: 100W 未満のプロセッサでの一般的なヒートシンクと関連ファン
図 3: 100W 未満のプロセッサでの一般的なヒートシンクと関連ファン

ファンから発生し、ワークステーションから放出される騒音を低下させるためには、発生する熱量を減少させる (したがって、必要なエアフローを減少させる) か、または冷却メカニズムをより効率的にする必要があります。ワークステーション ユーザは、現在の技術で達成可能な最高の絶対パフォーマンスを望んでいるため、発生する熱量の減少は可能ではあるものの、一般に実用的ではありません。言い換えれば、ユーザは、しばしば (ある点まで) 騒音を我慢してもパフォーマンスの向上を望むことから、一般に電力消費の限界点が押し上げられています。一方、ファン数の削減、円滑なエアフローの実現、または空気の動きを短縮するなど、冷却効率を向上させることは、対応可能な課題と言えます。

  HP の稼動音低下技術

HP のハイエンド ワークステーション HP xw9400 Workstation は、与えられた空間、能力、および騒音の制約の中で可能な最高のパフォーマンスを必要とするハイエンド ユーザ向けに設計されています。xw9400 は、 2 基の AMD Opteron プロセッサ、1 枚以上のグラフィックス カード、および最大 64GB の SDRAM と最大 5 台の 3.5 インチ内部ハードディスク ドライブを搭載することで、これらのユーザが必要とする能力を提供しています。この装置全体の電源は、大型の 800W パワーサプライで賄われています。冷却に革新的なアプローチを採用したことで、大量の熱を拡散させるとともに、オフィス環境の騒音を適正に保っています。

水冷アセンブリ

ワークステーションを開発してきた長年の経験、および最近開発された水冷技術を有効に活用することで、xw9400 の稼動音は、空冷の同機種と比較して実質的に低く抑えられています。稼動音の低下は、水冷アセンブリによって実現されています。そのアセンブリは、エンクロージャの裏面外壁の近くに設置されており、プロセッサからの熱を迅速に熱交換器へと運び去ることにより、冷却効率を向上させるとともに、エアフローの必要性と、エアフローに伴う乱気流を減少させています (図 4)。
図 4: 水冷技術を搭載した xw9400 Workstation のシャーシ
図 4: 水冷技術を搭載した xw9400 Workstation のシャーシ

空冷の xw9400 構成で各プロセッサに接続されていた大きな空冷ヒートシンクは、プロセッサの最上部に固定された 2 枚の冷却板に置き換わっています。冷却板、ポンプ、および冷却液が、高温と長寿命を念頭に設計された HP 固有のゴムチューブで熱交換器に接続されています。CPU で発生した熱は、冷却板を通過する冷却液に移動します。シャーシのバックパネルに接続され、シャーシ ファンで冷却された熱交換器を液体が通過する間に、熱は、さらに熱交換器に移動します。このことは、最大 240W の CPU 電力が直接筐体の背面に排出されることを意味しており、内部のエアフローが減少し、シャーシ内の非効率的な空気の循環がほとんどなくなります。

さらに、すべての水冷コンポーネントは小さなプラスチックの枠に入っており、プロセッサの迅速なインストールやアップグレードを行うことができます。

ワークステーションでは、比較的新しいテクノロジが採用されていますが、xw9400 で使用されているテクノロジには、過去 10 年にわたって数千のメインフレーム アプリケーションで実証され、障害が 1 件も報告されていないテクノロジもあります。冷却システムに障害が発生した場合にも、システムが CPU の過熱を検出し、正常なシャットダウンが実行されます。

利点

水冷システムの一番の利点は、パーソナル ワークステーションのユーザに、稼動音を増大させることなく、より高パフォーマンスのプロセッサ セットを提供できることです。実際に、水冷システムと水冷以外のシステムをラボで比較した結果、稼動音がかなり低下することが示されました (図 5)。dB は特定の位置で測定され、また対数で表現されていることに注意してください。

ここに示すように、アイドル時で 1.5dB、CPU 負荷の大きいベンチマーク Thermnow! を実行すると 3.0dB を超えて稼動音が大きく低下しました。

図 5: 水冷システムと水冷以外の冷却システムの、ラボでの比較結果

テスト※6 120W の非水冷システム 120W の水冷システム
アイドル 27.4dB 26.0dB
Thermnow! 30.1dB 26.4dB

水冷システムのさらに大きな利点として、冷却システムから発生する音の種類の変化があります。主観的ではありますが、調査によると、特に高周波数や不規則な変調など、特定種類の稼動音が、他の稼動音と比較して低下していることが示されています※7。水冷アセンブリによって、プロセッサに直接接続された大きなヒートシンクが排除され、ヒートシンクの羽根を通るエアフローで発生する高周波数の「サイレン音」が減少します。さらに、水冷液のファン (水冷アセンブリの一部) は、従来のシャーシ ファンよりも低速で回転するため、ファン ブレード キャビテーションが減少し、放出されるファンの雑音の全体的な音質が改善します。

注意事項

ここまで説明したように、HP xw9400 Workstation では、水冷技術を採用することによって、かなりの稼動音の低下が実現されています。しかし、構成によっては、水冷による利点がないものもあります。

xw9400 で水冷を装備する場合の注意事項
・水冷システム搭載によって、システムのコストが幾分増大し、したがって若干価格が上昇します。

  まとめ

HP は、革新的なテクノロジを採用してエンド ユーザの使用実感 (エクスペリエンス) を向上させることにより、テクノロジ リーダーとしての地位を確実なものにしています。ワークステーションの電力消費が引き続き増大するのに伴い、液体冷却の需要が、CPU を超えて他のコンポーネントにも広がるものと考えています。HP は、熱管理の経験に基いて、これらのテクノロジを採用してパフォーマンスを向上させるとともに、システムの稼動音レベルを低下させることで、現在必要なシステムを開発するとともに、将来のシステムの基盤を整備しています。
※1 少なくともアイドル時には、オプティカル ドライブや複数ハードドライブは稼動していません。
※2 たとえば、 120W のプロセッサを 2 基搭載したシステムでは、500W または 800W のパワーサプライを 1 台だけ装備しています。最大の電力を消費するのは、明らかにプロセッサです。
※3 出典:
http://www.amd.com/us-en/Processors/TechnicalResources/0,,30_182_739_1102,00.html (英語)、
http://www.intel.com/support/product.htm (英語)
※4 http://www.osha.gov/dts/osta/otm/noise/health_effects/soundpropagation.html (英語)、
※5 メモリ、グラフィックス (およびその他の I/O) およびプロセッサ間で、合理的にバランスの取れた「一般的な」構成。
※6 アイドル: システムがアイドル時、Thermnow!: AMD 固有の CPU 負荷プログラム
※7 http://www.osha.gov/dts/osta/otm/noise/health_effects/index.html
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