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掌編連載小説 「ヤマタイ・チャレンジに乾杯」

第三話 「ヤマタイ・チャレンジに乾杯」解説編

掌編連載小説 「ヤマタイ・チャレンジに乾杯」

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SOA。そのパラダイムシフト
SOA導入には、なぜガバナンスが大事なのか?
サービス定義から見たSOA導入の考え方

解説者(プロフィール)

 
日本ヒューレット・パッカード株式会社

コンサルティング・インテグレーション統括本部

シニアコンサルタント

宮原 猛 日本ヒューレット・パッカード株式会社
コンサルティング・インテグレーション統括本部
シニアコンサルタント
宮原 猛
 

SOA導入には、なぜガバナンスが大事なのか?

―競争優位の土台となる変化への迅速・柔軟な仕組みを実現する上で、SOAは大変有効だということがわかりました。では、実際にSOAでシステムを構築する際、どんな点に注意したらいいのでしょうか?

宮原 前回解説したようにISAC(アイザック:IT Strategy Accelerated by Consulting)等によってアジリティ強化の優先順位を決めSOA化を行うわけですが、SOAでは従来の開発モデルよりも、ルールを厳密に決めておかねばなりません。SOAはアーキテクチャですから、適切なサービス構築のルール、厳格なインタフェースが必要となるからです。それらを決めるにはガバナンスが不可欠となります。

また、ルールを徹底するには、全社員のSOAへの理解と支援はもちろんですが、新たなスキルと価値観の変革を求めたり、組織自体の変革が必要なケースもあり、いずれもガバナンスなしには解決できません。ガバナンスがなければ、「SOAはただの無秩序なWebサービス」になりかねません。

―通常ガバナンスは企業統治と訳されますが、SOA化に当たってガバナンスはどんな役割を担うのでしょうか?

宮原 SOA化はテクノロジーだけでなく人やプロセスを巻き込んだトータルな企業変革となります。また、SOA化はビッグバンではなく長い道のりとなるので、既存の問題点に取り組み、長期的な変化に備えるために、あらゆる部門の協力が必要です。そこで、HPではSOA適用にあたって考慮しておくべき事柄を8つのドメインにまとめ、協力的なアプローチの道筋を示しています(図1参照)。

 
図1: 8ドメイン
SOA化はビッグバンではなく長い道のりとなる。そのため全部門の協力を得るためにガバナンスが不可欠となる。HPでは8つのドメインにわけてそれぞれ果たすべき役割を規定している
図1 8ドメイン
SOA化のゴールはビジネス(「業務」)とITの同期となるわけですが、そのためには「人・組織」〜「調達、アウトソーシング」の各ドメインが長期に渡って進化・成熟していかなければなりません。部門を超えたさらなるチーム協力が必要であり、ガバナンスが必要不可欠なのです。 

SOA化に際しては全社的な責務を持つ組織が必要となり、ガバナンスはその後ろ盾となります。ガバナンスがなければ、部門間をまたがった意思決定プロセスを実行し、効果的な投資効果を実現していくことは難しいですね。

―ガバナンスの大切さはわかりました。ではSOA化に際して、ガバナンスをどのように適用すればいいのでしょうか?

宮原 ガバナンスは、まずSOA化を行う自社のビジネス分野を決定する上で発揮しなければなりません。限られた予算と期間を考えれば、何でもかんでもSOA化を行えばいいというわけではないからです。アジリティを強化するにしても、業務によっては既存の資産を活用したりパッケージを活用した方がいい場合もあります。

SOAと従来のソリューションの役割分担は、3C(Core competence、Collaboration、Co sourcing)のレベルで考えるとわかりやすいでしょう(図2参照)。競争優位を実現するには、コアコンピタンスでかつ変化が激しいビジネスでSOA化を行うことがポイントです。コアコンピタンスの部分で差別化を行うには、そこを担うシステムは自社の業務の競合優位性を十二分に活かせるように、投資してスクラッチから構築することでも十分な ROIを得ることができるはずです。

一方、コアコンピタンス以外の業務ではパッケージソフトを利用したり、業務自体をアウトソーシングすることで、コスト抑制やスピーディな処理を実現することができます。コアコンピタンス以外の部分でSOA化を行っても、コストと時間がかかるばかりで、大きな効果を期待することはできません。

また、システム品質の要求レベルも100%を求めるのか80%でいいのか決めることもガバナンスです。最初から100%のものを求めるのではなく、使いながらレベルアップしていくことで、ROIをコントロールすることが可能になります。

 
 
図2: SOA化の優先順位は3Cのレベルから考えることができる
図2 SOA化の優先順位は3Cのレベルから考えることができる
HPではSOA化を行うに当たって、「HP SOA 7サービス」をご提供しており、これによってお客さまのニーズや制約条件に合わせて、ビジネスプロセスやアプリケーション開発、インフラ、運用レベルから取り組むなど、多様なアプローチによるSOA化を可能にします(図3参照)。ガバナンスはビジネスプロセスアプローチの中の「基本設計」に相当し、ガバナンス基盤の確立とアーキテクチャの規定を行うことになります。
 
「基本設計」は、「ビジョン策定」「基本計画策定」を受けて行うのが一般的ですが、既にビジョンや基本計画が策定されている場合は、「基本設計」から取り組むことでガバナンス基盤の確立とアーキテクチャの規定、実行計画を立案することもできます。
 
 
図3: 基本設計フェースでガバナンス基盤の確立とアーキテクチャの規定に取り組む
図3 基本設計フェースでガバナンス基盤の確立とアーキテクチャの規定に取り組む

―ガバナンスとアーキテクチャの整合性を取る必要があるわけですね。

宮原 猛

宮原 はい、ガバナンスとアーキテクチャは車の両輪です。SOAは企業において長期的なイニシアティブとして実施すべきものであり、ガバナンスとアーキテクチャはその指針として位置づけることができます。企業の目標を達成するために、手段(Project)は常に基本指針(ガバナンスとアーキテクチャ)に則して全体最適化を図る必要があるのです。 

ガバナンスは全体最適化されたひな形を維持・進化させる仕組みであり、アーキテクチャは全体最適を実現するためのひな形を提供します。したがって、ガバナンスがないと複雑性が増してSOAの効果を得ることができず、アーキテクチャがないと個別最適なサイロ化したシステムになってしまう危険があります(図4参照)。

 
 
図4: ガバナンスとアーキテクチャによって全体最適化されたSOA化したシステムを構築することができる
図4 ガバナンスとアーキテクチャによって全体最適化されたSOA化したシステムを構築することができる
従来型の技術標準・技術ガイドラインと「基本設計」を、ガバナンスとアーキテクチャの面で比較したものが図5となります。従来の技術標準や技術ガイドラインは、プリンシプル、論理モデル、実装要件において、網羅性と維持管理に問題がある構造でした。一方、「基本設計」ではプリンシプル、論理モデル、実装要件の全体を網羅し、シンプルな維持管理ができる全体体系を構築することが可能となっています。
 
 
図5: 従来型と「基本設計」のガバナンスとアーキテクチャの全体体系
図5 従来型と「基本設計」のガバナンスとアーキテクチャの全体体系
従来型の技術標準・技術ガイドラインには、次のような問題点がありました。

1.の場合(図中@の青点線の箇所) 
  • アーキテクチャモデルと実際の実装(製品選定など)が混在し、適用対象が局所化されてしまい、有効性がなくなる
  • アーキテクチャモデルや実装要件の適用方法・手順が規定されず、各プロジェクトへの展開の方策が不明確。形骸化する場合が多い
2.の場合(図中Aの赤点線の箇所)
  • アーキテクチャモデルと適用手順が分離記述されていない。適用範囲や手順が変更になっても文書が改訂されず形骸化してしまうことが多い
  • 適用手順が定められた理由が述べられておらず、適用例外の判断が困難な場合が多く形骸化してしまうことが多い
一方「基本設計」は、従来型の技術標準・技術ガイドラインの限界をカバーすることで、次のようなメリットを提供することができます。
  • アーキテクチャと実際の実装を階層表現とし、多様な適用対象に対応可能なものにする
  • アーキテクチャとガバナンス共に、プリンシプル〜実装要件・手順の階層構造とし、アーキテクチャの策定とその維持展開を網羅的に実施可能にする
  • アーキテクチャとガバナンスを分離記述し、それぞれで体系化し、それぞれの変更の影響を相互に及ばさない有効な文書変更管理を実現する
さらに、「基本設計」では、Governance & Architecture Frameworkを参照することによって、容易にガバナンス基盤、アーキテクチャ、実行計画を策定することができるのです(図6参照)。
 
 
図6: 「基本設計」の流れ
図6 「基本設計」の流れ

―最後にこうしたガバナンスを徹底しSOA導入を成功させるために欠かせない人あるいは機能はありますか?

宮原 本当に効果的なSOAシステムを構築するには、ガバナンスを貫徹するためにさまざまなステークホルダーの利害を調整しなければなりません。前述しましたように、SOA化に際しては全社的な責務を持つ組織が必要であり、その役割を担うのがAPO(Architecture Program Office)です。

APOはプログラムの遂行と調整を実施するとともに、アーキテクチャの策定、維持を行い、各プロジェクトにおけるアーキテクチャ適用を促進し、アーキテクチャとプロジェクト間の調停を行う役割を担います。いわばガバナンスの実行機関です。具体的にAPOは、戦略立案、アーキテクチャ策定、ガバナンス整備、ポートフォリオ管理、予算管理、ライフサイクル管理(策定・実装・変更・廃棄)、調達、リソース管理、レビュー、調整/ステアリングコミッティ、KM/情報共有、教育/啓蒙、評価/KPI管理、変革の管理 (MOC)までをカバーします。

SOAを採用したシステム構築を成功させるには、バーチャルでもいいのですが、実行機関として具体的な組織体としてAPOを立ち上げる必要があります。各部門から選りすぐりの人材を結集し、一貫してSOAプロジェクトをコントロールしなければなりません。APOの働き如何によって、SOAが成功するかどうか決まると言っても過言ではありません。ここでIT部門の果たすべき役割は大きいと思います。

今やITはビジネスそのものになりつつあり、IT部門もそれにふさわしい役割を担えるようにならなければなりません。HPはお客さまのニーズに合ったSOA導入の支援をすることで、ビジネス強化、競争優位実現に貢献したいと願っております。
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